少し前ですが、文科省が8月末に次年度(令和6年度)の予算要求資料を公表しました。
以前僕が行政機関に勤めていた頃、周囲の職員が8月くらいから次年度の話を始めていたのを聞いて、「まだ今年度が始まったばかりだというのに、来年度の話をするなんてずいぶん早いなぁ」と思ったことがあります。
でも、スケジュールを考えれば全く早い訳ではありません。地方の場合、10月くらいから次年度の予算要求が始まります。予算要求資料作成のためには、もちろん事前に検討しなければなりません。
そして、地方の予算を検討するにあたり、国の予算を参考にしなければなりませんので、国の予算は、地方の予算要求の前に公表しておかなければならないということになります。
8月末に公表ということを考えると、遅くとも6月くらいから検討をしているのではないかと思います。6月なんて、新年度がスタートしてまだ2か月です。そんな時期から次年度の話をするなんて…と思うとすごいなと思うと同時に、その年度の反省が生かせないのではと思ってしまいます。でも、頭脳明晰な方々がされていることですので、滞りなくされているのだろうとも思います。
さて、前置きが長くなりましたが、予算の中身です。
報道等では、懸案事項とされていた一人一台端末の更新費を国がもつことを大々的に言われましたが、それ以外の部分についていくつか書きます。
まず、5月に自民党の特命委員会が発表したプラン関連では、「具体的な制度設計を進めつつ、職務の負荷や職責を踏まえ、先行して以下の処遇改善を図る」として、
①主任手当の額の改善 +4億円
②管理職手当の額の改善 +4億円 ※ともに令和7年1月から
としています。政府の骨太方針がしっかり反映されています。詳細な制度については現在、中教審で議論している最中ですので「進めつつ」としているのでしょう。「4億円」と聞くと、すごい額に聞こえますが、「主任」と名のつく職は、教務主任や学年主任等があり、おそらく保健主事や生徒指導主事も含まれ、また、それぞれの学校にこれらの職はいますので、一人当たりの増額は微々たるものでしょう。ちなみに現在は、一日200円という雀の涙ほどの手当です。
次に、学校スタッフ関連では、「教員業務支援員」(いわゆる、「スクール・サポート・スタッフ」)及び「学習指導員」がともに拡充されています(前者は前年度比+71億円、後者は同+9億円)。
また、新規事業として、「副校長・教頭マネジメント支援員の配置」とあり、17億円の予算をあてており、2,350人を採用することとしています。これは、副校長及び教頭が激務であることを考慮したものでしょう。その業務内容を「教職員の勤務管理事務の支援、学校徴収金等の会計管理等」としています。ただ、全国の学校数に比べ、2,350人という数字はあまりにも少ない数ですので、一つの学校が恩恵を感じるのはさほど多くないのかもしれません。
微々たるものですが、給与を改善したり、学校に関わる人を増したりするというのは個人的には賛成です。学校現場の教員は「とにかく人がほしい」と言いますが、いろいろな方が学校に関わってくれるのはありがたいです。でも、理想を言えば、教員以外で学校に関わってくれる人材は、若い人がいいのです。なぜなら、あれをして、これをしてというのを言いやすいからです。これは結構大きい問題で、やはり年上の方々に仕事をお願いするのは、誰であろうと気が引けるものです。ですので、可能な限り、若い人の方がありがたいのです。
とは言え、そんな人はなかなかいないでしょう。少子化も進み、教師の仕事の過酷さも知れ渡った今となれば、そんな都合の良い人材はなかなかいないでしょう。そこで大事になってくるのが、管理職による学校マネジメントです。「この方は、こういう仕事ができるとか、こういうことが業務である」とうのをしっかり周知することにより、仕事を頼みやすくなります。正直、現在、僕が勤める学校にも教員以外の多くの職員がいますが、一人一人の守備範囲というのがわかっていません。これらをはっきりすることにより、仕事の分担が可能になってくると思います。
教員は基本的に教科指導のプロです。この業務に専念できるように、可能な限り、これ以外の誰でもできる業務は他の人材に任せることが、教員の魅力向上につながるものと思っています。そのカギを握っているのは、何度も書いていますが、義務制の学校の場合、市町村教育委員会事務局と学校長です。国の動きを見て、少しずつでいいので、改善されていくことを願うばかりです。