10月3日に「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果が公表されました。簡単に言えば、いじめや不登校に関する調査結果です。
新聞等では不登校数が大幅に増えたことが大きく報道されました。小中学校に限って言えば、前年度比プラス22.1%の299,048人となっています(過去最多)。
少子化により、子供の数は減っているというのに、不登校数の数は増え続ける一方です。確認できるデータで言えば、平成14年度(2002年度)の不登校数(小中学校)は131,252人で、令和4年度(2022年度)は上述の299,048人です。また、1,000人あたりの不登校数(小中学校)は平成14年度(2002年度)が11.8人だったのに対し、令和4年度(2022年度)は31.7人となっています。
この数字を見れば、「学校は何やってんだ」「教員は何やってんだ」とか思う人もいることでしょう。特に、学校に行くのが当たり前だった世代の人たちはそう思うことでしょう。
しかしながら、不登校は今や学級に1名以上はいる、当たり前の状況です。現在の学校制度や教員数、社会状況等の中で解決するのは極めて困難だと思っています。
以下、さらに詳細な状況を見ていきます。
不登校の学年別の数で言えば、小1が最も少なく、小2からどんどん増え続け、ピークは中2です。中3は受験があるためか、減少に転じている傾向です。
また、不登校の原因は「無気力、不安」が51.8%と群を抜いて多く、「いじめ」はわずか0.2%しかいません。
たとえば、いじめや友人関係をめぐるトラブルであれば、解決に導くことができれば、またはクラス替えをすれば再登校は可能です。しかしながら、「無気力」はどうにもなりません。いくら学校側が働きかけても、ほぼ状況が変わらないというのが現状です。
これから書くことは、不登校をめぐる問題でありながら、これまであまり言われてこなかったことです。学校関係者はわかっている人も多いと思いますが、大きな声では言えないことです。そのため、違和感を抱く人や強い反発を覚える人もいるかもしれません。しかし、僕個人的には、これまでの経験から、確信しています。
結論から言いましょう。不登校の原因は、ほぼ家庭環境にあります。今回の調査結果では、家庭関係の原因は3つあり(「生活環境の急激な変化」、「親子の関わり方」、「家庭内の不和」)、その合計は11.6%ですが、個人的にはこれが90%を超えると思っています。
なぜなら、僕がこれまで関わってきた不登校の生徒は総じて、家庭内に何かがありました。親が離婚していたり、離婚していなくても不仲であったり、子供に無関心であったりと。つまり、家庭内で子供に十分に関われていないという状況がありました。逆に言えば、家庭内で子供に十分に関わっていれば、不登校数はゼロになると僕は思っています。
「十分に関わる」とは、子供に対して「あなたは大切な存在だ」と伝え続けると同時に、良いことをしたときには本気で褒め、悪いことをしたときには本気で叱ることだと思っています。これができない親が近年増えているため、不登校は増えているのです。特に、思春期を迎えた子供は親離れをしていきますが、子供は、他の誰でもなく、親の愛情を一番求めており、親に認めてほしいのです。
つまり、不登校の原因の約半数を占める「無気力、不安」は親の関わりが不足していることが要因です。離婚後、子供を養うために仕事が忙しくなり、子供と十分関わる時間がなかったり、また、単に自分のことにしか関心がない親だったり。
一昔前は、このような親はその親が注意していたり、また、祖父母が親の役割を担っていたりした家庭もあったでしょう。しかし、核家族化の進行とともに、そのような家庭は減り、親は好き勝手にやっており、子育ての意識が高い家庭の子供のみ健全な成長をしています。
「不登校は家庭が原因ですから、家庭がしっかりしてください」なんて学校は言えません。よって、不登校数はこれからも増え続けるのです。
でも、「不登校数の増加」という文字や数字を見ると、誰しも学校が原因であるように映ります。しかしながら、これまで述べてきたように原因はそうでなく、また、この種の報道があるせいで学校や教員に過度なプレッシャーと余計な仕事が増えます。
だから、もうこのような報道はやめましょう。無意味です。もちろん、調査は必要です。それを学校関係者が把握しておくくらいでいいでしょう。多くのことがそうであるように、メディアが報道しなければ、誰も関心をもちません。人間の思考は多くの場合、メディアによって作られるのです。メディアを批判的に見ることができる人が多いのならいいですが、メディアの報道を鵜呑みにする人が多いのが現実です。
ちなみに、文科省のサイトは以下のものです。詳しく見てみたい方はどうぞ。