埼玉県戸田市の教育政策を参考にしましょう

教育政策

 10月20日(金)に、中央教育審議会初等中等教育分科会の「質の高い教師の確保特別部会」の5回目の会合が開催された模様です。関係資料が文科省のHPにアップされています。

 今回は、第4回の際に提案された「教育職員の健康及び福祉を確保する方策等」について更なる議論がされたようです。資料の数が多すぎて、全てに目を通してはいませんが、特に印象に残った資料について紹介します。

 紹介するのは、埼玉県戸田市の戸ヶ崎教育長の提出資料です。戸ヶ崎教育長は、最近よくいろいろな雑誌等で見かける方です。僕の中では、基礎自治体の教育長では先進的な取組をされている方という認識です。

 ちなみに、戸田市は、荒川を挟んで東京都と隣接する市で、人口142,114人(令和5年10月1日現在)、小学校12校、中学校6校を抱えています。

 資料の一部は、9月に開催された第4回の会合の際にもありますが、今回はより詳しく紹介されています。

 冒頭に、教員の時間外在校等時間が大きく減少したことが書かれていますが、この種の数字はあまりあてになりません。なぜなら、管理職が在校時間を減らすために「家に帰りなさい」と積極的に声掛けする事例もあり、帰宅後に仕事をしている実態もあるからです。戸田市の場合は違う可能性が高いと思いますが、調査項目が確認できないため、正確にはわかりません。

 資料の最初のページで目を引いたのは、「民間企業の社員を3ヶ月間、学校へ派遣」という記載です。これについては、詳細は不明ですが、おそらく教員の働き方を見てもらい、その実態を掴んでもらったのだと思います。こういうのはとても良い取組だと思います。

 次に印象に残ったのは、「教育委員会と首長部局との連携が不可欠」という記載です。

 学校現場の人間からすれば、教育委員会というのは多くの権限をもつ、大きな機関に見えますが、実際はその自治体の中にある部局の一つに過ぎません。そのため、何か新しいことをやりたい、人を増やしてほしいと思っても、首長部局に対して予算の要求を行い、折衝しなければなりません。

 これが大変なことですので、教育の予算というのはなかなかつかないことが多いという現状があります。しかしながら、教育長と首長の間で常日頃から連携がとれていれば、予算要求は各段にしやすくなります。そのため、連携は大事なのです。資料では、「人的・物的支援に係る予算措置を検討」とあり、また、「市の広報誌に「3分類」について掲載し、市民へ啓発」ともあります。学校の課題を広く一般市民に共有するのはとても良いことだと思います。

 そして最も印象に残ったのは、本気で業務改善を進めるためには「校長が本気になる」、「基礎自治体の教育委員会が本気になる」と強いメッセージが書かれている点です。これは、おこがましいことですが、本ブログにおいて僕が書いてきたことと一致します。小中学校における働き方改革を進めようと思うなら、「文科省が…」、「県が…」と言っていても何も変わらないのです。何故なら、国や都道府県は抱えているものは巨大かつ広範であり、予算措置を含め、一つ一つの学校や一人一人の教員に効果のある施策をするのはとても難しいのです。そのため、扱っている規模が小さい、基礎自治体や校長の手腕がカギとなるのです。

 「攻めの学校経営(新たな教育活動を積極果敢に導入するなど)を行っている学校ほど在校等時間の減少率が高い傾向にある」と資料の最後の方にありますが、これがとても大事なことだと思います。

 組織は、前例踏襲をすれば(つまり、守りの姿勢でいれば)、波風が立たず、特に周囲からも何も言われません。しかしながら、何かを改善しようとするなら、改革をしなければなりません。時には、周囲の批判にさらされることもあるでしょう。しかし、そこは情熱と信念をもって邁進しなければなりません。

 全国の学校長の皆様、基礎自治体の教育長の皆様、どうぞ埼玉県戸田市の事例を参考に、攻めの姿勢で教育現場の働き方改革を進めてください。

 ちなみに、文科省のサイトは以下のURLです。

 中央教育審議会初等中等教育分科会質の高い教師の確保特別部会(第5回):文部科学省 (mext.go.jp)

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