学校の働き方改革は本当に進んでいるのか?

教育政策

 令和6年、2024年が幕を開けました。

 本ブログは昨年4月に始めましたが、当初の想定どおりとはいかないまでも、おおむね悪くないペースで続けることができています。一つのことを習慣化することの難しさ、また、コツコツと何かを続けていくことが、自分の人生にとってあらゆる意味で大事であることを改めて感じました。今年は昨年以上に量も質も向上させていきたいと思っています。

 さて、昨年末(12月27日)に、文科省HPにて「令和5年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」が公表されました。本調査は、平成28年度から毎年度実施しており、「市区町村別の公表等や優良事例の展開を通じて、働き方改革の取組を促すこと」を目的としています。調査対象は、全国の都道府県教育委員会、市町村教育委員会等です。

 今回の記事では、本調査の結果について書きます。

 本調査の公表資料は以下のようになっています。

 ①調査結果概要(全24ページ)

 ②調査結果詳細(全190ページ)

 ③都道府県別調査結果(都道府県により異なる)

 ④都道府県別結果概要(各13ページ)

 ⑤調査用紙(全7ページ)

 この中で最も興味深いのは、④です。いわゆる「3分類」について、各都道府県の市町村別取組状況が掲載されています。「3分類」の一つ一つの項目について、取り組んでいる自治体名が掲載されており、全国平均との比較もあります。

 僕がこれを見て思ったのは、「実態と異なるのではないか」ということです。具体的な自治体名を挙げるのは差し控えますが、「これは未だに学校でやってるだろ」と思うことが、学校以外でやっているように記載されている項目もあります。

 ただ、これは仕方のないことかとも思います。回答する担当者や組織によりますが、所管する全ての学校でやっていなくても、一部の学校でやっていれば、やっていることにする場合もあると思います。そのため、調査の精度というのはそこまで高くないのかもしれません。皆さんも、自分が勤務する自治体の調査結果と実態との乖離について見ていただければと思います。

 次に、全国的な傾向を述べれば、昨年度に比べ著しい改善が見られる項目が、

登下校時の対応

学校徴収金の管理

授業準備

 の3項目です。「登下校時の対応」と「学校徴収金の管理」は「基本的には学校以外が担うべき業務」ですので、改善が見られてある意味当然なのですが、「授業準備」は「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」ですので、これが改善しているのは学校等の努力の賜物です。

 ①の資料下部に、大阪府枚方市及び鹿児島県の和田小学校の取組例が掲載されており、大阪府枚方市は「教材等のデータを共有」、鹿児島県和田小学校は「日課表(時間割)に授業準備を位置づけ」とあります。詳細については、資料をご覧になっていただきたいのですが、この例のように市町村教育委員会や学校が主体的に取り組むことにより、学校は変わっていきます。市町村教育委員会事務局の方や学校管理職の方は、ぜひ参考にされてください。

 一方、依然として数字が低いのは、「児童生徒の休み時間における対応」です。これも仕方のないことかと思います。休み時間のみ地域人材にお願いするということは学校としてやりにくく、また、児童生徒のトラブルのほとんどは休み時間に起きます。つまり、仮に地域人材に委託したとしても、トラブルが起これば、結局、教員が対応せざるを得ない部分があります。そのため、この数値は低くなる傾向にあります。

 個人的には、各学年に最低一人は、授業以外の雑務を何でも対応できるスタッフがいればありがたいなと思います。例えば、上に挙げた休み時間の対応であったり、会計事務・調査回答等の事務処理、別室対応、配付物の仕分け等… こういうのを教員以外がしてくれると大変助かります。特に、事務仕事は教員という職業の性質上、苦手意識をもっている教員が多く、処理するのに時間がかかります。そのため、例えば、教員を志す大学生のような若いスタッフがいれば気軽に頼みやすく、ありがたいなと思います。このようなスタッフの配置が望まれるところです。

 いかがだったでしょうか。自分の勤務する自治体の状況について知る意味では、大変面白い資料だと思います。欲を言えば、項目別の自治体ランキングがあると、より参考になるかもしれません。ただ、これをすると、全国学力テストのように批判が出るかもしれません。人口規模や学校数等によって状況は異なると思いますので、それらのデータを示した上でランキングも公表すると、他の自治体にとって参考になると思います。

 

 ちなみに、文科省のHPは以下のとおりです。

 令和5年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果:文部科学省 (mext.go.jp)

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