元日に発生した能登半島地震は、時間が経過するにつれ、その被害の甚大さが明らかになっています。亡くなられた方々に心からお悔やみ申し上げると同時に、被災された方々にお見舞い申し上げます。
さて、今般の地震において特に被害が大きかった輪島市で17日、市内3校の中学生258人の集団避難が始まりました(3校計約400人中。学年の内訳は1年生73人、2年生81人、3年生104人)。
戦時中の集団疎開を彷彿とさせる大胆な策だと思いますが、これに対して、否定的な意見は概ね見られません。テレビ等でも、避難を決断した子供と、子供との別れを惜しむ保護者の姿が取り上げられることが多く、それは美しいものとして捉えられる傾向にあります。避難先は、輪島市から100kmほど離れた白山市の宿泊研修施設であり、そこで集団生活を送るとされています。
子供たちの学習保障という意味合いにおいては、特に受験期を迎えている子供にとって、本政策は、有効な手立てだと思います。しかしながら、子供たちが集団生活をするということは、当然教員も集団生活をすると思うのです。教員が何人体制で指導にあたり、勤務体系はどのようなものになっているか等の報道は全くありません。当然、現地で生徒と寝食を共にする教員も一定数いることでしょう。この方々の負担についても議論されるべきだと思います。おそらく、ほとんどの教員が被災者であり、ご自身の家族があるでしょうから。
本政策は、かなりのスピード感で実行されています。対応されている石川県教育委員会事務局及び輪島市教育委員会事務局、そして勿論、3つの中学校に勤務する先生方の苦労は計り知れないものがあります。
しかし、拙速である感が否めません。子供たちの利益を最優先し、現場の負担を軽視した、まさに行政的な発想であると思います。もっとも、教員も仕事人である以上、子供たちのために力を尽くすことは当然のことです。ただ、この非常時において、本政策は教員の精神的及び身体的負担を増加させるものだと思います。せめて、受験を控えた中学3年生のみに限定するという方法でも良かったのではと思います。なぜなら、我々はコロナ禍において、数か月程度の学習の遅れは取り戻せることを立証したからです。
我々教員は、宿泊を伴う学校行事を経験しますので、生徒を宿泊させるノウハウは持っています。しかし、これらの学校行事はほとんど数日で終わります。数日で終わるからこそ、終わりが見えているからこそ頑張ろうと思えます(もっとも、これらの行事に何の負担も感じない教員もいることでしょう)。
本政策は、本年度中の約2か月を想定しているとのことですが、今後の状況によっては延長される可能性があります。終わりが見えない、先の見通しがないものは、子供にとっても、大人にとっても辛いものです。
いかにして早く学校再開をさせるかー非常災害時においてはこれが最も重要です。これも、コロナ禍でわかったように、学校は社会を回すうえで重要な役割を担っており、学校に児童生徒が登校しなければ、多くの大人が影響を受けます。
完全な形での学校再開は難しいと思いますが、まずは、宿泊を伴わない形での部分的な学校再開に向けて、関係者の方々は尽力していただきたいと思います。もちろん、関係者の方々も被災者の一人であるでしょうから、周囲の県を含む日本中が支援するべきだと思っています。生徒のため、教員のため、保護者のため、一日でも早く、集団避難生活が終わることを願っています。
・・・という記事を書いていたら、24日(水)から輪島市の一部の学校を再開するとの記事を見ました。避難していない児童生徒が対象ということですが、この段階で学校再開が可能なら、避難生活をまずは終わらせ、これもコロナ禍であったように、例えば、短時間の分散登校をする方が良いかと思います。とにかく、宿泊を伴う形での共同生活は終わらせた方が良いと思います。