今回は、標題の書籍のレビューをします。初版は2022年11月25日、版元は教育開発研究所です。
本書は、著者(玉川大学教授 中西茂氏)が選定した、現在の教育界のキーパーソン7名のインタビューと合わせて、著者自身が『別冊教職研修「学校管理職合格セミナー」』に掲載したコラムをまとめたものです。
7名は以下の方々です。※( )内の肩書は出版時。< >内がテーマ。
・荒瀬 克己氏(教職員支援機構理事長)<教員の資質能力>
・青木 栄一氏(東北大学教授)<教育政策>
・遠藤 洋路氏(熊本市教育長)<GIGAスクール>
・合田 哲雄氏(文化庁次長)<学習指導要領>
・妹尾 昌俊氏(教育研究家)<働き方改革>
・八並 光俊氏(東京理科大学教授)<生徒指導>
・貝ノ瀬 滋氏(三鷹市教育長)<地域連携>
いずれの方々も教育関係の媒体ではよく目にする、錚々たる面々です。これらの方々の意見がまとめて読めるということを大変ワクワクしていましたが、僕自身、購入前は勘違いしていました。それは、それぞれのテーマに対する7名の方々の意見のみがまとめられた書籍だと思っていたのです。タイトルを見ればそう思いませんか?
しかし、実際は冒頭に書いたとおり、7名の方々の意見(インタビュー)はあるもののの、大部分は著者のコラムをまとめたものです。最も古いのは2009年のものであり、さすがにここまで前だと隔世の感が否めません。しかも、過去の自分のコラムに「この後、こういう動きになった」、「〇〇氏も同様の発言をしている」などの注釈をつけ、あたかも自分のコラムの質が高いということをアピールしているかのように思えてきました。そのため、途中でうんざりしてきて、7名の方々のインタビューのみ読みました。
正直、この編集の仕方は、著者自身の自己満足のためにやっているようにしか思いません。自分の仕事の記録をただまとめているだけの個人的な著作集であり、公の出版物として世に出していいのかとまで思えてきました。「はじめに」に「本書はこの間(2009年~2021年)の議論を振り返り、10年、20年先の教育界を見通そうと試みています。教育界の現在、過去、未来を考える温故知新の試みとも言えます」と書いていますが、そこまで大それたものとは思えません。逆に、よくここまで言えるものだと思ってしまいました。人間、謙虚でありたいですね。
さらに極めつけは、巻末の氏岡真弓氏(朝日新聞編集委員)との対談です。同世代の教育記者ということであり、これまでの互いの仕事の遍歴などを語っていますが、これも個人的な思いから設定した対談である感じしかしませんでした。
この10年余りの教育界の大まかな動きを知る上では役に立つ本かもしれませんが、編集の仕方がどうも気に入らない書籍でした。著者のファンである方には読むことをおススメしますが、それ以外の方については、7名の方々の著作物等を読む方が有益かと思います。