先月(2024年2月)、福岡県の私立中学校において、生徒が受験を希望する高校に対して、入学願書を提出していなかったというニュースがありました。このニュースは全国に広がり、「学校側は何をしてるんだ!」、「生徒に落ち度はないので願書の受理をすべきだ!」などの意見が見られました。
僕自身、中学校の現場で約20年働いていますが、進路事務を担当するときはとても気を遣います。なぜなら、本件のように教員のミスが生徒の人生を狂わせることになるからです。
ですので、願書等の提出期間は生徒募集要項等で何度も確認したうえで、「提出期限を1分でも過ぎたら高校は受け取ってくれないので、中学校への提出期限も必ず守るように」と、生徒に口うるさく言ってきました。
僕自身、今のところ、本件のようなことをしたことはありませんが、人間ですから、組織としてのチェック体制が整備されていなければ、起こり得ると思います。でも、それはあってはならないものですので、中学3年を担当する教員は事務仕事の正確性が求められます。
さて、ご存知の方も多いと思いますが、本件には続きがあり、受験機会を逸した3名に対し「追試験」という形で受験機会を設けるというニュースがありました。これで生徒たちへの救済措置はとられたことになりますが、僕がこのニュースを見たときに思ったのは、学校に起因する出願ミスは今後、救済措置がとられることになったなということです。つまり、先例をつくったことになったということです。
このような事態はおそらく、これまでもあったと思いますし、そのときはここまでのニュースにならなかったと思います。しかし、今回、これだけのニュースになり、救済措置をとるということになりましたので、今後もし、同じような事態が起こったときは、「あのときは救済措置をとったから、同じようにしてくれ」ということが言いやすくなりましたし、それを設定しない訳にはいかなくなったと思います。これは中学校側と生徒及び保護者にとって良い流れであると思います。とは言え、我々教員もいち仕事人として、ミスをしてはならないというのは当たり前のことです。
ところで、本件が最初に話題になったとき、学校が願書を提出するのではなく、各家庭が出願する、WEB出願等の方法に変えるべきだという意見も多く見られました。確かに近年、WEB出願を導入する学校は増えてきており、中学校側の負担軽減につながっています。
しかしながら、WEB出願に係る事務も経験してみて思ったことは(あくまで本県の場合ですが)、出願自体は各家庭でWEB上でしますが、入力した情報を出力した紙と調査書等を提出しなければならず、結局、持ち込みもしくは郵送での出願はしなければなりません。これではWEB出願を利便性を最大限に活かし切れていないように思います。WEB出願を最大限に活かすためには、出力した願書の提出は不要にし、調査書等は暗号化したうえでアップロード等するようにし、紙での提出をゼロにしなければならないと思います。
ただ、このような技術的なシステム構築は教員の専門外であるため、もちろん、民間企業の方々にしていただかなければなりません。すでに、このような方法をとっている自治体や学校もあるかもしれませんが、中学校側の負担軽減のため、全国の学校で導入してほしいところです。
生徒の出願に係る業務というのは、一生を左右するとても重要なものであるため、学校側の負担をより少なくし、また、必要な手当ても保障されるべきだと思います。