先日(3月26日)、熊本市立の中学校の部活動の在り方を検討していた「熊本市部活動改革検討委員会」が、今後の改革案について熊本市教委に答申しました。
本記事では、熊本市の改革案の中身と国の方向性との違い、また、熊本市のねらい(推測ですが💦)について書いてみようと思います。
部活動改革について興味のある方はお読みいただけると幸いです。
改革の中身は?
改革案の主な内容は以下のとおりです。
①学校の部活動を継続
②指導に関わるのは希望する教職員のみ
③指導者(教職員を含む)に対しての適正な対価の支払い
④持続可能な運営体制を構築するための人材バンクの設置
⑤多様なニーズに応えるための「チャレンジクラブ(仮称)」の創設
他にもありますが、国の方向性及びこれまでの部活動の在り方と異なるものを挙げました。
①が国の方向性と逆行するものであり、②~⑤がこれまでの在り方と異なるものです。特に、①が大きな注目を集めました。何故なら、ご承知のことと思いますが、教職員の負担を軽減するため、国は可能な限り、学校の業務から部活動を切り離そうとしているからです。
国の方向性はどんなもの?
では、国は中学校の今後の部活動の在り方についてどのように考えているのかというと、令和5年度から3年間を「改革推進期間」とし、部活動を学校から切り離し、可能な限り地域に移行することを実現させようとしています(まずは休日からとし、地域の実情に応じて取り組むようです)。
ただ、これは言うは易しの話であり、これまで、学校の教員が全面的に背負ってきた部活動指導や運営を休日のみでも地域に委託するのは大変難しいことだとされています。場所や道具の問題はどうにかなるとしても、適切な人材がそう簡単に見つかると思えません。
熊本市のねらいとは?
熊本市も勿論、国の動向を見ながら、市の方針を定めようとしていると思いますが、なぜ、あえて国の方向性と逆行することをしようとしているのでしょうか。
この答申の裏には、熊本市の遠藤洋路教育長の考えがあると思います。
話が逸れますが、熊本市はコロナ禍が始まった2020年、オンライン授業をいち早く導入し、全国的な注目を浴びました。これを主導したのが、遠藤教育長及び遠藤教育長を熊本市に招聘した大西一史市長です。しかも、熊本市はICTに関して先進的な取り組みをしていた訳ではなく、むしろ、ICTの整備状況は政令市の中でもワーストに近いものでした。
しかし、遠藤教育長就任後、一気に整備を進め、また現場の支援体制も構築したようです。そして、全国一斉休校が始まると、オンライン授業を開始しました(詳細は、佐藤明彦著『教育委員会が本気出したらスゴかった。』時事通信社、2020年)。
このような体制を段階的に、かつ確実に構築できるのが遠藤教育長の手腕だと僕は考えています。今回の部活動改革に関しても、国の方向性をそのまま反映するのではなく、学校現場の教員、生徒、保護者等にアンケート等をとったうえで、その結果を政策に反映しようとしています。
これもよく知られているように、部活動の地域移行の話が本格化した最も大きなきっかけは、増え続ける一方の教員の業務量を減らすことでした。教育課程外であり、教員の専門性と関係のないことが多い部活動を切り離すことが最もわかりやすく、世論の支持を得やすいため、白羽の矢が立った訳です。
しかし、教員に負担が大きいからと言って、部活動を学校から切り離し、地域移行しようとしたところで、絶対にうまくいくはずはないと遠藤教育長は思ったのだと思います。そこで、活用しようとしているのが、学校現場に一定数いる、部活動指導に関わりたいと思っている教員です。その方々の熱意を失わせることなく、また、生徒の運動等に触れる機会を失わせないことの現実的な解決策が、この改革案だと僕は思っています。
全国の自治体がほぼ国の方向性と同じ動きをする中、特異な動きをするところが熊本市らしいですが、これも遠藤教育長の手腕及び、それに理解を示す大西市長の存在あってのものと思います。教育に限った話ではないですが、政策を立案する際、いかに首長の理解を得、予算を獲得するかはとても重要だからです。
答申の詳細と、これまでの経緯等は以下のリンク先にありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=46183&e_id=10