19日(金)に開催された12回目の「質の高い教師の確保特別部会」で、約一年かけて議論してきた教員の処遇改善に関して、一定の方向性が出たように感じています。
内容については、すでに多くのメディアで報じられていますので、多くの方がご存知だと思うのですが、目玉政策は「教職調整額が10%に引き上げられること」かと思います。
「教職調整額」が引き上げられるのは、約半世紀ぶりですので、この変化はとても大きいと思うのですが、ネット上では「10%でも少なすぎる」、「『定額働かせ放題』は変わっていない」などの批判的なコメントが多く見られます。
確かにその通りなんですが、約半世紀も変わっていないものが変わるというのはとても大きなことだと思いますし、この結果に導いたのは、教員の労働環境について声を上げてくれた方々のおかげだと思っています。いつの時代も、人間の世界を変革させていくのは人間の熱意と行動力です。この場を借りて、粘り強く活動していただいている方々に感謝と敬意を表します。
さて、上述のように、今回の政策に関しては批判が多く見られますが、「そもそもの業務量を減らせ」という意見も多く見られます。そこで今回は、「なぜ、教員の業務量は多いのか」ということについて考えてみたいと思います。
前例踏襲ばかりしている
教員の仕事に限らず、仕事は毎年同じことをするものと、新たに生み出すものがあると思います。新たなものを生み出すにあたっては、時間はそれなりにかかると思いますが、毎年しているものを毎年同じようにしていないでしょうか? 時には立ち止まって、自分の仕事に疑いをもつことが必要です。「この仕事はこういうふうにやってきたけど、違うやり方をしても同じ効果が得られるのではないか」、「子どものためと思ってやってきたけど、自分のこだわりだったのではないか」というように、より時間がかからない方法を考えてみるべきです。
人間、長く関わっているものほど、「これはこう!」のようなこだわりが出てきますが、こだわりを捨てると楽になることがあります。特に、学級経営や授業の手法を若い頃から同じような仕方でされている方は見直しが必要です。求められる学力観も変わってきていますし、子供や保護者の価値観も変わってきています。また、経験を積むことによって、若いことと同じようにしなくても子どもを動かせる力がついてきていると思います。以前、同僚のベテラン教員の方が「この齢になっても、仕事の減らせる方法がわかりません」と言っていたのですが、その方は自分の仕事への見直しができていないことになります。
管理職のマネジメントがない
自分の仕事に関しては、前例踏襲を見直すことで変化が出ますが、学年全体や学校全体のことに関しては多くの人の意見や考え方があり、なかなか難しいところがあります。そこで大事になってくるのが管理職のマネジメントです。学校行事や事務作業など、教員にとって負担となりがちなものは、学校長のマネジメント次第で業務量は大きく変わってきます。我々はよく「文科省が…」、「教育委員会が…」と言いますが、実は学校の業務は、教育課程編成権を持っている学校長が決められるものがかなり多いのです。
例えば、この時期に学校が昔から行っている家庭訪問も、近年は実施しない学校が増えてきていると聞きます。また、これから運動会等の体育的行事の練習が本格化してくる学校も多いかと思いますが、どんな種目をしたり、どのような規模で実施したりするかは勿論、学校によって異なります。定期テストの回数や方法、通知表の記載内容なども学校で異なります。そもそも、通知表は法的根拠のないものです。これらのことは、学校長が「これはしない」または「規模縮小する」と言えば、大きな負担軽減が図れるものです。
あなたの学校の校長先生はいかがでしょうか? 校長は「あがりの職」とも言われますので、校長になったことに満足し、平穏無事に退職するまでとにかく波風を起こしたくないという校長ならば、何のマネジメントもなく、前例踏襲ばかりでしょう。こういう校長ならば、教員の労働環境が変わることはないでしょう。こればかりはどうしようもないですが、少しずつ同じ考えをもつ味方を増やしていき、変えていくしか方法はありません。
教員の余裕は子供に還元される
我々教員は、もともと子供と過ごすのが好きで教職という仕事に就いており、一日のほとんどの時間を子供と過ごすため、「子供に関することは何でもしなければならない」という錯覚に陥ってしまいます。
確かに、子供は学校で長い時間を過ごしますが、基本的に家庭で育つのであり、僕自身、良くも悪くも一人の教員が子供に与える影響は少ないものと考えています。教員も一人の人間ですので、少しでも早く退勤し、余暇の時間や休日に自分の好きなことをしてリフレッシュした方がより質の高い仕事ができると僕は考えています。ただ、このような考えは校内で少数派だと感じています。
しかし、教員自身が心と時間にゆとりをもち、いつも笑顔で子供の前にいることが僕は大事だと思います。子供は大人が思っている以上に大人の表情や発言、行動を観察しています。「この先生はいつも笑顔で話しかけやすそうだ」と思われるように、まずは自分の仕事のやり方を見直してみませんか?