令和6年(2024年)4月19日(金)に開催された、第12回の「質の高い教師の確保特別部会」において、財務省が教員の給与に関する資料を提出しています。
小難しいタイトルがついていますが、簡単に言えば、「教員の給与に関する財務省の見解」です。これを見ると、財務省が教員の給与に関してどのように考えているのかわかりますので、今回はこれについて書いてみようと思います。
結論から言えば、財務省は「教員の給与引き上げには否定的です」。以下、詳しく述べます。
財務省が示す4つの視点
資料によれば、財務省は教員の給与引き上げについて、以下の4つの視点に立った議論が必要だとしています。
①人材確保との関係
②民間や一般行政職とのバランス
③メリハリのある給与体系
④安定財源の確保
この4つについて、諸データを用いながら、財務省の見解を示しています。
視点に対する財務省の見解は?
①の「人材確保との関係」については、「昨今、教員採用試験の倍率が低下しており、人材確保のため、給与の引き上げが必要」との意見を踏まえ、
・新卒の採用試験受験者数は20年前と比べ、増えている
・近年の倍率の低下は、大量退職に伴う構造的な現象
としたうえで、
若年人口が大きく減少する中で、質の高い人材を確保するには、「働き方改革」等により、業務の効率化を徹底しなければならない
としています。
つまり、簡単に言えば、「給料上げろ、という前に業務改革をしなさい」と言っています。
確かにそのとおりなのですが、資料にある採用試験の受験者数の経年変化をよく見ると、新卒受験者は増えていますが、既卒受験者は近年、著しく減少しています。これはおそらく、臨時採用等で現場経験をした教員が、業務の大変さを感じ、採用試験を受験しなくなっているためと考えられます。
逆に、新卒者は現場を知らないため、大きな夢や希望をもって採用試験を受験します。この数字について、財務省は見解を示していません。都合の良い数字だけ出している可能性があります。現場を経験した人間が、その仕事にやりがいを感じないというのは、個人的に仕事として由々しきものがあると思います。
次に②の「民間や一般行政職とのバランス」については、「教員アンケートに基づく時間外在校等時間は、教職調整額が前提としている残業時間を大きく上回っている」との意見を踏まえ、
・教員の給与は、時間外勤務手当を含む一般行政職の給与より高い
・教職調整額を含む額を退職手当の算定基礎としているため、退職手当も一般行政職より高い
としています。つまり、「給料が少ないというけど、役所勤めの人より貰ってるでしょ」と言っています。
実際、大卒で経験年数18年の教員と一般行政職の平均年収を比較すると、教員は6,008,834円、一般行政職は5,893,657円というデータがあり、その差115,000円ほどです。退職手当も60万円ほど教員が多いようです。
確かに、僕が行政機関で勤めていたとき、時間外勤務が少ないときは特に手取りが少なく、悲しい思いをしました(時間外勤務が多かったときは結構手取りがありましたが、平均すると、教員の方が多いようです)。
一般行政職の方が基本給が少ないことはわかっています。しかし、学校現場の教員は、実は給与が足りないという人はあまりいないのです。給与は今のままでいいから、子供と向き合う時間がもっとほしい」と思っている人が多いのです(これを言えば、財務省マターではなくなってきますが)。これについては本稿とは関係がなく、長くなりますので、別稿で書きます)。
財務省のまとめ
思いのほか、長くなりましたので、③と④については次回に回します。
ちなみに、資料の最終ページに「まとめ」がありますが、今回の内容に関連したものとして、以下のように記載されています。
教員勤務実態調査を踏まえれば、一定の処遇改善を検討する必要があるが、教員の給与は、人事院勧告を踏まえ近年大幅に改善していること、時間外勤務手当を含む一般行政職の給与(年収ベース)より優遇されていること等を踏まえる必要。
資料のリンク先は以下のものです。興味のある方は覗いてみてください。