5月13日(月)に議論された「審議のまとめ」では、教職調整額が10%以上に引き上げられることが大きな話題になり、そして、大きな批判を集めていますが、今回はあまり話題になっていない教職調整額の増額以外の内容について書いてみようと思います。この記事を読めば、教員の処遇に関する国の最新の考えがわかると思います。
「審議のまとめ」のポイントは?
今回の「審議のまとめ」のポイントは以下の5つです(教職調整額関連を除く)。
小学校の中学年で教科担任制を推進
新卒教員は担任にしない
主幹教諭と教諭の間に新たな職を創設
担任手当の支給
管理職手当の改善
以下、詳しく見ていきましょう。
小学校中学年の教科担任制の推進について
小学校高学年の教科担任制については、学校の実情により異なるところでしょうが、すでに教科担任制が導入されてます。これを中学年にも拡大しようとするものです。
「審議のまとめ」によれば、「中学年は、生活科の学習が終わり、低学年には設けられていない社会科、理科、外国語活動や総合的な学習の時間が始まるなど、より各教科等の特質に応じた学びにつなげていく時期である」としたうえで、「専門性のある教師が専科指導を行うことを通して、子供たちへの教育の質の向上を図っていく必要がある」としています。また、中学年では第3学年が 980 単位時間、第4学年で 1,015 単位時間となっており、小学校高学年や中学校の1,015 単位時間とほぼ変わらないことからも、小学校中学年の学級担任の教師の持ち授業時数の軽減が必要である」ともしています。
僕は小学校勤務の経験がありませんので、詳しいことはよくわかりませんが💦、教員一人あたりの授業時数が減り、教材研究の時間が少なくなることはとても良いことと思います。また、一つの学級を複数の教員で見ることの効果も大きいと思います。いわゆる「学級王国」をつくりたい方にとっては望ましくないと思いますが、今後も一定期間は若手の教員が増えると思いますので、一人の教員にその学級の責任を負わせないためにも良いと思います。
ただ、これは「推進」ですので、果たしてどのくらいの学校で導入が可能かはわかりません💦 同じ学年にそれなりの教員がいないと成り立たないでしょうし、また、時間割作成も煩雑になりそうな気がします。
ちなみに、第6学年の教科担任制導入の状況は、平成 30年度(2018年度)は算数7.2%、理科47.8%、体育10.5%、外国語19.3%でしたが、令和4年度(2022年度)は、算数15.9%、理科65.4%、体育21.7%、外国語 48.9%と増加しているとのことです。
新卒教員の担任外について
これはなかなか斬新であり、実現できればとても良い案と思います。ただし、中学校では可能でしょうが、小学校ではそんな人的余裕はないかと思います。
「審議のまとめ」によれば、「新規採用教師への支援の観点から、新卒1年目は、学級担任ではなく教科担任として学級副担任を担当させたり、持ち授業時数の軽減を図ったりする取組を行っている教育委員会の例もあり、国においては、このような取組を行うことができるよう、教科担任制の充実に向けた定数改善を図る必要がある」としています。
例もあるとのことですが、先にも書いたように、自治体の規模が大きくなればなるほど、これを実現するのは難しいのではと思います。そして、定数改善も図り、仮に実現できたところで、昨今の教員のなり手不足の現状から、他の事業でもよく見られるように「予算はあっても、人が配置されない」という状況になると思います。
僕自身の経験を交えて言うと、担任という仕事はかなり特別なものだと思います。子供と第一線で接するのは多くの喜びがあると同時に、多くのトラブルに接する機会が増え、その対応に迫られるからです。経験を積めば積むほど、トラブルの対処法もわかってきますが、経験が浅い頃は、担任というのはとても大変だと思っていました。今でも僕は担任業が向いていないと自覚していますが、上手な人は経験が浅い頃から上手な人もいます。ただ、少なくとも一年間は他の担任の先生の仕事を見て学ぶというのはとても良いことだと思います。
新たな職とは?
新たな職に対する関心は薄いようですが、僕自身は賛成です。教員の世界はよく、管理職とその他大勢の教諭という「鍋蓋型の組織」と言われますが、経験やスキルに応じた職階というのはあって然るべきだと思います。これは行政職を経験して思いました。例えば、採用1年目の先生と20年超の先生が同じ「教諭」という職名というのは、本人のモチベーションを考えても望ましくないと思います。
「審議のまとめ」では、「近年、学校では、教育相談や特別支援教育に関する連絡調整などの子供の抱える課題への対応や、校内研修、情報教育、防災・安全教育、道徳教育といった学校横断的な取組への対応などの学校が組織的に対応すべき事象が多様化・複雑化している。また、このような状況も踏まえ、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじめとした多様な支援スタッフが学校内で増えるとともに、地域や様々な関係機関との協力が重要となっており、学校内外との連携・調整に関する業務が増加している」としたうえで、「学校の組織的・機動的なマネジメント体制の構築に向けて、若手教師へのサポート機能を抜本的に強化するとともに、子供の抱える課題への対応や学校横断的な取組への対応について、学校内外との連携・調整機能を充実させるため、「新たな職」を創設し、中堅層の教師をこの新たな職として学校に配置することができるような仕組みを構築することが必要である」としています。
これは、3月13日(水)に開催された10回目の部会で詳しく議論されたようですが、提出された東京都教育委員会の資料に詳しく書かれています。つまり、東京都の例を参考にしているようです。
東京都は「主幹教諭」と「教諭」の間の職名を「主任教諭」という名称にしているそうですが、国も同じにする可能性が高いと思います。
ここまで書いたところで長くなってきましたので、申し訳ありませんが残りは次回に回します。
ちなみに、「審議のまとめ」は以下のサイトを参考にしてください。本体は59ページありますので、まずは、4ページにまとめられている「概要」を見ることをおススメします。