前回の続きです。5月13日(月)に議論された「審議のまとめ」の中から、教職調整額の増額以外の内容について書きます。前回の記事とこの記事を合わせて読めば、教員の処遇に関する国の最新の考えがわかると思います。
「審議のまとめ」のポイントは?
今回の「審議のまとめ」のポイントは以下の5つです(教職調整額関連を除く)。
3つはすでに前回書きましたので、今回は残り2つについて書きます。
小学校の中学年で教科担任制を推進
新卒教員は担任にしない
主幹教諭と教諭の間に新たな職を創設
担任手当の支給
管理職手当の改善
以下、詳しく見ていきましょう。
担任手当の支給について
担任手当の必要性については、僕も以前の記事で書きましたが、「審議のまとめ」では、「学級担任は、子供たちの学習や学校生活の基盤である学級に関する様々な業務や保護者への連絡や相談対応などに取り組んでおり、令和4年度勤務実態調査によれば全校種を通じて学級担任をしている教師は学級担任外の教師よりも在校等時間が長くなっている。こうした職務の重要性や負荷を踏まえ、現在、一律支給されている義務教育等教員特別手当について、職務の負担に応じた支給方法に見直すこととし、学級担任について手当額を加算する必要がある」としています。
近年、固定担任制を廃止し、チーム担任制を導入する学校も増えていると聞きますが、固定担任制であれば、担任手当は間違いなく必要だろうと思います。僕自身も中学校の担任と副担任を双方経験してみて思いますが、担任と副担任の仕事量はかなり違います。
担任手当を導入することで、担任に負担が偏ることを後押ししてしまうため、学年全体で負担をシェアするべきだという声も一部ありますが、学年主任のよほど優れたマネジメントとチームとしての和がないと、担任の負担をシェアするなんて現実的にはかなり難しいものです。人間、さまざまな考えの人がいますので、学年部の職員全員がいつもまとまろう、協力しようという気持ちになるなんてほとんどありません。基本的には、自分の仕事のことで常に頭がいっぱいであり、自分が一番忙しいと思っている人が多いのが現状ではないでしょうか。ですので、学年部で負担をシェアしましょうなんてのはかなりの理想論だろうと思います。
僕自身、担任をしているときは、正直、日々の業務については協力してほしいとも思っていなかった(自分が受け持つ生徒のことは自分でしたいと思っていました)ので、担任は担任としての仕事をし、その分、給与を加算するのはとても良いことと思います。
ただ、生徒指導上の案件については、チームで対応すべきと思います。生徒指導上の案件は、複数の生徒が関わることが多く、時間がかかれば良い解決ができないからです。そのため、何か起こったときは、学年主任等の指揮のもと、担任だけでなく、複数の職員で対応にあたるべきだと思います。
ちなみに、チーム担任制を導入している学校については、「審議のまとめ」では「給与負担を担う都道府県・指定都市の判断により、その分担に応じて支給することなども考えられる」としています。
管理職手当の改善について
管理職手当は既に支給されていますが、これを改善しようとするものです。「審議のまとめ」では、「学校現場の課題が多様化・複雑化する中、学校教育の質の向上を図るとともに、多様なバックグラウンドを有する教師や事務職員、支援スタッフ等の間の協働を実現するためには、高いマネジメント能力等を有する管理職による適切な学校運営が重要であり、このような職務と職責の重要性を踏まえ、管理職手当を改善する必要がある」としています。
皆さんの学校の管理職の先生方は「高いマネジメント能力等」を有していますか? これは現状としてかなり難しいと思います。僕自身、学校マネジメントにおいて最も重要だと思うのが、「適切な人材配置」です。「職員一人一人の能力や経験に応じた業務の割り振り」―これができていれば、学校という組織はうまく機能すると考えています。
そして、「適切な人材配置」をするためには、職員一人一人の能力を把握しなければならず、さらに、能力を把握するためには仕事ぶりを観察しなければなりません。しかしながら、ほとんどの学校の校長先生は職員の仕事ぶりを見ておらず、能力の把握と適切な評価ができていないのではないかと思います(こればかりは経験がないので憶測です)。
学校という職場は、職員室で仕事をする時間はほとんどなく、職員の授業力等の能力を把握するためには、管理職はその場所に足を運ばなければなりません。これは学校という職場の大きな特殊性ですよね。しかも、仕事に対しての具体的な数値など目に見える結果が出る訳でもありません。
僕が行政機関で働いているときに感じたことは、常に管理職に仕事ぶりが見られているため、良くも悪くも適切な評価がされるなということです。管理職手当が改善されるならば、管理職は職員一人一人の仕事ぶりを観察し、適切な能力把握に努めていただきたいと思います。
まとめ
2回に分けて書かせていただきました。改めて、ポイントを挙げると以下のとおりです(教職調整額の増額は除いています)。
小学校の中学年で教科担任制を推進
新卒教員は担任にしない
主幹教諭と教諭の間に新たな職を創設
担任手当の支給
管理職手当の改善
国の主導ですぐ変わるものと、自治体や学校の実情により、反映できないものもありますが、学校における働き方改革は、本ブログで度々書いているように、上からの指示を待つのではなく、自分で変えられることは自分で変えることが重要です。
ちなみに、「審議のまとめ」は以下のサイトを参考にしてください。本体は59ページありますので、まずは、4ページにまとめられている「概要」を見ることをおススメします。