少子化なのに教員が足りない理由

教師不足

 昨今、教員不足が言われていますが、少子化も進んでいます。

「なぜ、子どもの数が減っているのに、教員が足りないのか?」と思う人もいることでしょう。特に、学校現場に関わりのない方、子供と日常的に関わりのない仕事をされている方はそう思うことでしょう。

 「少子化が進んでいるから、1つの学校、1つの学級にいる子供は少なくなっているんでしょ? それなのに、なんで先生たちの数が足りないの?」と思っている人のために、その疑問に答えたいと思います

 先に結論を述べると、①少子化は地域により偏りがあること、②子どもの数に対しての教員の数は決められていること、③大量退職期を迎えていること、④教員の業務が激務であることが明らかになってきたことなどが挙げられます。以下、1つずつ見ていきたいと思います。

少子化は地域の偏りが大きい

 これは想像がつくと思うのですが、日本の全ての地域で少子化が進んでいる訳ではありません。人口減少が激しい地域は山間部や離島です。そのような地域では、1学校及び1学級あたりの児童生徒数はおおむね年々減少しています。つまり、一人の先生が対応する子どもの数は少なくなっています。まさに、少子化という言葉がぴったりの環境です。こういった学校に勤務する先生はほぼ毎日定時に退勤できると聞きます。子どもの数が少なければ少ないほど、事務仕事は少なく、子供同士のトラブルも少ないからです

 一方、都市部では人口が増えている地域もあります。こういった地域では少子化という現象を全く感じません。本当に子どもの数は減っているのかと疑うほどです💦

教員の数は決められている

 これが意外に学校関係者以外に知られていませんが、教員の数は学級数に基づき、法律で決められています。つまり、例えば、ある学校が閉校になり、その学校に勤めていた教員はそのまま純増となるのかと言えば、なりません。その年度の退職者数を考慮し、新規採用者数を調整しています(と思います)。

 また、1学級あたりの児童生徒の数は40人を上限と定められており(近年、小学校で35人学級が拡大しつつありますが)、例えば、その学年の児童生徒の数が20人しかいないなら、1学級20人となり、40人ならば1学級40人、60人ならば2学級30人となります。

 ここでおもしろいのは、学年全体の人数が増えれば増えるほど、教員一人あたりの担当する児童生徒の数が増えるかというと、全体で40人なら担任は1人ですが、全体で60人なら担任は2人になり、1学級の児童生徒の数は30人になります。

 つまり、40の倍数に限りなく近いときが1学級あたりの児童生徒の数は多くなり、少しでも超えれば、1学級あたりの児童生徒の数は少なくなるのです。前者の方が担任も大変であり、逆に後者になると、1学級あたりの児童生徒の数が減り、教員の数は増えます(中学校の場合、教科によっては授業数が増えますが💦)。

 この数字の操作はもちろんできませんが、児童生徒の数というのは、配置される教員の数に関わってくるため、我々教員にとって、とても大事な数なのです。

大量退職期と激務の表面化等の重なり

 では、学級の数に応じて教員が配置されているかと言えば、これが近年はそうではないのです。これがいわゆる「教員不足」と呼ばれているものです。つまり、配置されるべき教員の数を満たしていないのです。大きな原因は近年、教員が大量退職期を迎えているからだと言われています。

 現在、60歳〜65歳の世代は、採用数が最も多かった世代と言われており、この方々が近年、退職しています。そして、その穴を埋めることができていないのです。

 本来なら、退職した分、順調に新規採用等で穴を埋めるはずでしょうが、近年、教員の業務の大変さがさかんに報道されるようになり、教員を志す学生が減っている状況にあります。これが重なっていることにより、教員不足の状態になっています。また、若い世代の採用者が増え、出産に伴う休暇を取得する教員が増えていること、さらに、仕事上でストレスを抱え、休職する教員もおり、その補充ができていないことも多くあります。特別支援学級が増加しているのも影響しているでしょう。

 以前なら、こういった場合、教員を志す主に20代の人間でその穴を埋めることができていました。実際、僕自身が20代の頃は、この臨時採用の枠ですらあまりなく、臨時採用として働ければラッキーというくらい、教員の数は充実していました。ところが現在は、年度途中からでも働いてくれる若い教員志望者が少なくなっています。

 若い世代がいないなら、多くいる退職した方々をあてにしたいところですが、この方々はまだまだ学校現場で働きたいという方もいる一方で、60を超えてなお児童生徒に関わる業務はもうしたくないと思っている方も一定数います。そのため、穴を埋めることができません。

 あと数年すれば、大量退職は落ち着きますので、現在ほどの不足は見られなくなると言われていますが、そのときまでに「教師は魅力ある職業」であることを多くの学生にわかってもらう必要があります。そのためには、文科省がよく言っているように、「国、都道府県、市町村、学校現場などのそれぞれの主体が、その権限と責任に基づき、主体的に働き方改革を進める必要がある」と思います。

まとめ

 いかだだったでしょうか。少子化なのに教員が足りないポイントは以下のようになります。

少子化には地域の偏りがある

教員の数は法律で決められている

大量退職期を迎えている

教員の激務ぶりが表面化している

 教員という職業は大変な面もあるけれど、子供の成長に関わることができる、やりがいがある職業だということをマスコミにさかんに報道してもらいたいですね。

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