全中の競技廃止の妥当性

部活動

 日本中学校体育連盟(以下、「中体連」)は6月8日(土)、令和9年度(2027年度)以降、全国中学校体育大会(以下、「全中」)のいくつかの競技種目を廃止すると発表しました。これについて、賛否双方の意見がいろいろ上がっていますが、中学校の現場の視点で書いてみようと思います。

 本記事を読めば、廃止の理由や中学校の現場の実情について理解できると思います。

廃止される競技は?

 令和9年度から廃止される競技は以下の9つです。

水泳・ハンドボール・体操・新体操・ソフトボール(男子)・相撲・スキー・スケート・アイスホッケー

 水泳やスキーなどは、オリンピックなどで注目される競技であるため、意外と思う人もいるかもしれませんが、中学校教員の立場としては納得です。

廃止される理由は?

 これらの競技が廃止される理由について中体連は、「少子化」、「教員の負担軽減」、「部活動設置率の低さ(20%未満とのこと)」などとしています。

 報道を受け、メディアでは否定的な意見が目立ちます。確かに、全中は大人の世界で言えばオリンピック、高校生で言えばインターハイにあたるとても大きな大会であり、中学生にとっては意義のある大会です。

 しかし、大会名称を見てください。「全国中学校体育大会」なのです。「全国中学生体育大会」ではないのです。これがどういうことかというと、全中は学校に設置されている部活動を基本として出場するものであるということです。ですので、廃止する理由の一つに「部活動設置率の低さ」を挙げているのです。

 地域により異なるでしょうが、現在、これら9つの競技の全中に出場している生徒はほとんど部活動に属していない生徒が多いのではないかと思います。つまり、通常は地域のクラブチーム等の一員として活動しており、全中の予選大会以外はほぼクラブチーム名で参加し、全中の予選のみ学校名で参加していると思います。これらの事情を知らない人からすれば、大会冊子等を見た際に、選手名と学校名を見て、普段から学校の部活動として活動している思うものですが、実態はかけ離れています。

全中の他にも全国大会はある

 上にも少し書きましたが、今回の報道を受け、各メディアでは、これらの競技に取り組む中学生を取り上げ、悲しむ様子等を流しています。確かに、これまであった全国大会がなくなるのは悲しいことと思います。

 しかしながら、これはあまり報道されませんが、中学生の全国大会は全中以外にもあります。僕はこれまで、野球・バドミントン・卓球などの部活動に関わってきましたが、これらの競技では中体連以外の◯◯連盟や◯◯協会が主催する全国大会があります。全ての競技であるとは断言ができませんが、おそらく廃止されることになった競技についてもあるはずです。報道では、全国大会がなくなってしまうような印象を受けますが、実は全国大会は他にもあるのです

 ですので、全中がなくなっても、その全国大会に出場することや上位入賞することを目標にすれば良いのです。また、全中の舞台で活躍することが高校進学に関わってくるとも言われますが、他の全国大会をその機会とすれば良いと思います。

教員の負担は重い

 学校関係者以外はご存知ないかもしれませんが、全中に出場する場合、学校の名前で出場する以上、必ず教員が引率しなければなりません。普段、クラブチーム等で活動していて、その生徒の活躍について全く知らない先生がある日突然、「◯◯さんが全中に出場することになったから引率に行ってくれ」と管理職から言われることがあります。しかもこれは、教員にとって重要な心身の疲労回復期間でもある夏季休業期間中あり、場所が遠隔地になる可能性もあり、宿泊を伴うものであり、勝ち上がれば拘束される日が伸びるものです。自分が指導してきた競技で全国大会の引率に行くこと、そして勿論、生徒や保護者にとってはこの上ない名誉でありますが、何の関わりもない競技の引率となると、教員にとって負担でしかありません。

 また、引率に行かずとも、自分が勤務する学校のエリアで全中が開催される場合、大会運営スタッフ等として動員されることがあります。例えば、九州地区で全中が開催される場合、九州各県の教員は数日間に渡り、動員される可能性があります。これらの負担も踏まえ、部活動として活動していないことが多い競技については廃止されることになったものと思います。少し乱暴な言い方をすれば、「部活動じゃないなら、別の大会に出場しなさい」という中体連のメッセージだと思います。

まとめ

 以上になります。全国大会がなくなることは生徒にとっては悲しいことではありますが、全中は部活動を基本として出場する大会であること、全中以外の全国大会があること、教員の負担が重いことを考えると、今回の決定は妥当なものだと思います。英断をしていただいた中体連に感謝します。

 また、これはあまり報道されていませんが、中体連は「陸上やバスケットボール、サッカー、軟式野球、バレーボールなど継続する11の競技についても大会の期間を3日以内として、参加者の数や経費を現在より30%削減する」としています。

 個人的には、小学校は都道府県大会まで、中学校はブロック大会(「九州」や「東北」など)までとし、全国大会は高校生以上とすれば良いと思います。大会があることで、子供を含め、関係者は熱中し、特に年齢が低い層ほど大人が熱中し、身体が十分に成長しきれていない子供に過度な負担を与えることにつながります。現状から考えて、全ての競技で全国大会を廃止するのは難しいですが、段階的に規模縮小していくことが望ましいと思っています。

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