夏休みを短くしてはいけない理由

教師不足

 もうすぐ、夏休みが始まります。先日、ニュースを見ていると、小中学生の子供がいる困窮世帯へのアンケート結果に関する報道があり、その60%が「夏休みはなくて良い」、「今より短くしてほしい」と答えたようです。

 現役教員である僕は声を大にして言います。夏休みを短くしてはいけません。今回はその理由を書きます。結論から言いますと、夏休みを短くすると、教師不足に拍車がかかります。以下、詳しく書いていきます。

子供たちが楽しみにしている

 夏休みへの期待を前面に表すのは、もちろん子供たちです。毎年7月に入ると、夏休みに向けてカウントダウンをする子供も多くいるはずです。

 学校に来て、友達と話したり、遊んだりするのも楽しい一方で、やはり、学校に行かずに家や地域などで、自分の好きなことをして過ごす方が楽しいと思う子供は多いと思います。特に、勉強を苦手と感じている子供は夏休みを心から楽しみにしています。そのため、「夏休みが短くなる」また「なくなる」などと言うと、子供たちが大きなショックを受けることが想定されます

保護者世代も夏休みを満喫してきた

 「夏休みを短くしてほしい」という困窮世帯の理由は、「食事代がかかる」、「体験活動等をさせる経済的余裕がない」ということを挙げていますが、これらのことを言う保護者も、自分が子供の頃は夏休みをしっかり満喫したのではないでしょうか

 もちろん、家庭により事情は様々でしょうが、今の保護者世代もその保護者の頑張りによって、夏休みを満喫したはずです。しかも、保護者世代の夏休みは今より、1週間程度長かったはずです。自分たちが夏休みを満喫したのに、子供たちは短くしてほしい、なくしてほしいと言うのは自分勝手な考えである気がします。

 とは言え、保護者の時代に比べ、現代は困窮世代が増え、物価も上昇し、また、暑さも厳しくなっています。夏休みになると、クーラーの効いた部屋でだらだら遊ぶ子供が増えることでしょう。このような姿を約1ヶ月も見ると、保護者のストレスもかかると思います。

 このような状況を改善するためには、行政の支援が必要だと思います。終日とは言いませんが、半日だけでも困窮世帯の子供を対象に学習会を開くなどすると良いかと思います。場所は、学校を基本とし、スタッフは全国に数多くいる退職教員等をあててはいかがでしょうか。

教員の休職率が上がる

 これが最も大きな理由ですが、夏休みを楽しみにしているのは子供たちだけではありません。我々教員も楽しみにしています。なぜなら、生徒が来ない学校というのは、患者がいない病院と同じ状況であるからです。つまり、毎日の関わりがなくなるのです。トラブル対応もしなくて良いのです。そもそも、トラブルが起こり得ないのです(こう言うと、子供たちとの関わりが好きで教員になったではないかと疑問をもつ方もいるでしょうが、学校には様々な児童生徒がいることをご理解ください)。

 我々教員は、夏休みの期間、子供たちと関わらないことにより、心身の疲労回復をしています。そのため、夏休みがなくなった場合、教員の精神疾患等による休職率はおそらく上がると思われます。そして、その代替教員は見つからず、教員不足に拍車がかかります。

 このように書くと、夏休み期間の教員は休んでいるだけと思われますが、その期間の全て休んでいる訳ではありません。夏休み以降の授業の授業をしたり、学校行事のための会議をしたりします。また、夏休み期間中は校外への出張等も増えます。中学校や高校は部活動指導もあります。

 それでも、子供たちが登校しないことにより、通常に比べて時間的・精神的余裕は生まれ、休みが取りやすい状況になります。その休みの中で、心身の疲労回復をし、夏休み明けの業務をこなすためのエネルギーを蓄えています。

 ただ、僕自身としては、夏休み中こそ、休みを多くとるのではなく、関係職員で学校行事の計画や見直しなどをすべきだと思います。なぜなら、夏休み中の方が心身の疲労度合いが少なく、生産的な会議になる可能性が高いからです。詳しくは以前の記事をご覧ください。

まとめ

 いかがだったでしょうか。困窮世帯の保護者の気持ちも理解できますが、夏休みというのは我々教員にとって、とても大事な期間です。先生たちのウェルビーイングのためにも、夏休みというのは必要です。

 夏休み期間を決定できる皆様、どうか保護者の意見に流されることなく、我々教員の心身の健康をしっかりサポートしてください。

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