学校の働き方改革を実感する方法

業務効率

 前回の記事で紹介した中教審特別部会の答申案をもって、一年以上に及んだ教員の働き方改革の議論に一定の方向性が出ました(実態は自民党が打ち出した政策に教育を管轄する官庁がお墨付きを与えるだけの出来レースでしたが)。

 目玉は何と言っても「教職調整額の増額」ですが、これに対して多くの批判が見られます。

 「定額働かせ放題は変わらない

 「給料を上げてほしいんじゃない

 「仕事を減らしてほしいんだ

 「子供と向き合う時間がもっとほしいんだ

 このような声が聞かれます。そこで今回は、学校現場の教員のリアルな働き方の実態を紹介するとともに、どうすれば働き方改革を実感できるのか(仕事を減らせるのか)について書いてみたいと思います。本記事を読めば、学校の働き方改革を実感できる方法がわかると思います。

教員のリアルな働き方は?

 ニュースの中やネット上では学校の労働環境に対して悲痛な声が上がっていますが、僕が見る限り、ほとんどの教員は日々、時間を厭わず働いている印象です。

 そもそも、教員は「勤務時間」や「休憩」といった概念がなく(僕自身も行政機関で働くまで全くありませんでした)、労働における対価など気にもしていません。「目の前に子供たちがいるから働いている」―その思いしかないように感じます。

 朝は、早い教員だと勤務開始時間の1時間以上も前から出勤しており、夕方も生徒たちが部活動で帰った後(もちろん、この時点で勤務終了時間を過ぎています)、ようやく机に座って教材研究や事務仕事を始めます。つまり、生徒が学校にいる間はあくせくと動き回っています。

 教員というのは、もともと子供たちと接することが好きで、職に就いている訳ですので、子供たちのためなら何でもしたいと思っている人の方が多い印象をもちます。

教員が負担に感じていることは?

 ところで、前回の記事で紹介した、中教審の特別部会の資料のページに、公立学校共済組合が実施した、教員のストレスチェックのデータ分析結果があります。

 それによれば、教員のストレス要因で最も多いのは「事務的な業務量」です。2016年からの経年変化がありますが、これはずっと変わりません。逆に、「学習指導」や「部活動指導」、「研究授業」などは5位までに入っていません。「学習指導」や「部活動指導」、「研究授業」は時間がかかることもあり、大変なときもありますが、これは教員の本来業務であると思っている教員が多く、ストレスだと感じている教員が少ないということになります。一方、「事務的な業務」は本来業務と思っておらず、また、苦手意識をもっている人が多いため、ストレスを感じているのだと思います。

 このデータからわかることは、「事務的な業務」を減らせば、働き方改革を実感できるということです。

負担を減らし、働き方改革を実感する方法

 では、どうすれば「事務的な業務」を減らせるのか。一つは管理職のマネジメントです(もちろん、教育委員会等の調査等を減らせという声も上がると思いますが、以前の記事で書いたようにこれは難しいのです)。

 つまり、管理職が教員一人一人の能力や適性を把握し、校内人事を行うということに尽きると思います。「事務的な業務」を苦手としている教員が多いとはいえ、校内に一定数、「事務的な業務」を得意とする教員はいます。その人たちに「事務的な業務」を多く任せ、そうでない人には少なくする。そして、それを教員に伝えるのです。「先生は、〇〇な力をもっているからこの仕事を任せたい」と。

 人は、自分の力を評価されると嬉しいものです。このような言葉掛けをすると、教員も意欲が向上するのではないかと思います。また、調査の回答等など教員でなくてもできる仕事は事務職員に任せるということも必要になってきます。

 ここまでは管理職しかできないことですが、教員一人一人が負担を減らし、働き方改革を実感する方法―これは働き方を変えるしかありません

 働き方改革が進まないと思っている方は、市町村教育委員会や都道府県教育委員会、そして、文部科学省が働き方改革を進めてくれると思っていませんか? 違います。働き方を変えるのはまず、自分自身です。

 もちろん、教育委員会や文科省が何かを変えることで、仕事の量が変わることはありますが(2020年に安倍首相(当時)が一斉休校を要請し、実現したことでそう感じている人もいるかもしれません)、こういったことは例外中の例外です。

 今、先生方がしている仕事で、必ずしなければならないことは何ですか? それは、そのやり方とその時間をかけなければできないことですか? やり方を変えても同じような効果が得られるではないでしょうか? また、本当に子供のためになっていますか? 自分のこだわりでやっていませんか?

 このように、自分のしている仕事に対して常に疑いをもって取り組むことで、その仕事にかかる時間を削減できることがあります。僕は常にそう思いながら仕事をし、仕事にかける時間を減らしていっています。

まとめ

 先に紹介した、公立学校共済組合のデータによれば、高ストレス者の割合が多い職種は「教諭」であり、逆に最も低いのは「校長」です

 校内で校長にモノを言える立場にいる人はいないため、ストレスを感じにくいのでしょう。しかしながら、個人的に思うことは、所属教員のため、時には市町村教育委員会と交渉したり、要望を上げたりするなど、もっと汗をかいていただきたいです。学校の働き方改革の鍵を握るのは校長なのです。

 そして、自分自身の仕事の仕方を見直しましょう。「こうすると、〇〇先生が反対するかも…」と思うことがあるかもしれませんが、案外、周りの人は気にしないものかもしれませんし、影響があると思う人には十分な相談をしましょう。言い方は悪いですが、「根回し」というのは、組織で生きる上でとても大事な戦術です。

 

タイトルとURLをコピーしました