先日、文科省が令和7年度(2025年度)予算の概算要求を公表しました。
注目すべきは、約1年の議論を経て中教審が答申した「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の中に盛り込まれた教職調整額の増額です。
答申の中では「少なくとも10%以上」としているため、自民党の特命委員会が出した10%と同じ数字を要求すると予想していたものの、なんと文科省は13%を要求しています。
この数字については、資料の公表より数日前に新聞等で報道され、「財務省との折衝の難航が予想される」という記事もいくつか見ましたが、根拠のない数字は表に出ないでしょうから、ある程度水面下で話は進んでいるのではないかと思います。
現段階では、事の進捗状況を僕自身が知る由もないですが、今回は次年度の文科省の予算要求について、教員の処遇改善に焦点をあて紹介します。
本記事を読めば、次年度の教員の処遇改善に関する政策の中身が理解できると思います。
処遇改善の主な中身は?
まず初めに、どのような面で処遇改善を要求しているのか紹介します。
教職調整額の改善(4%→13%)
学級担任への手当加算(+3,000円)
管理職手当の改善(+5,000円〜)
この3つです。ちなみに、令和8年(2026年)1月から給与に反映できるよう、予算要求しているとのことです。
教職調整額が13%になると…?
さて、では仮に教職調整額が13%になることが実現した場合、手取り収入がどう変わるのでしょうか。一部の報道では、調整額の割合が3.25倍になることから、「教員の給与が3倍超増える」みたいなものもありましたが、給与自体が3倍超になる訳ではありません。
東京都の場合、まず、「1号給2級」の場合で計算すると、基本給が178,100円ですので、4%なら7,124円の調整額がついているはずです。これが13%になった場合、23,153円の調整額がつきますので、16,029円手取りが増えることになります。
また、「80号給2級」の場合で計算すると、基本給が346,200円ですので、4%なら13,848円、13%なら45,006円で、31,158円の増額となります。基本給が上がるにしたがって、調整額ももちろん上がります。月の手取りが30,000円も増えるというのは結構嬉しいですよね。
ちなみに、自分の「号給」や「級」は給与明細で確認できると思いますので、調整額が13%になった場合、どのくらい手取りが増えるのか気になる方は計算してみてください。
ところで、現在僕が勤務する学校の事務職員が「教職調整額はボーナスにも影響してくるので、そう簡単には上がらないのでは?」と言っていました。つまり、ボーナスも増えるということです。果たしてどうなるのでしょうか。
その他の処遇改善は?
次に、その他の処遇改善について書きます。
学級担任手当は、上にも書きましたが月3,000円の手当てがつくということです。義務教育等教員特別⼿当に加算するということです。個人的には、月3,000円というのはあまりにも少ないと思います。担任であるというだけで多くの業務が発生しますので、もっと加算しても良いと思います。その代わり、担任外の給与を減らしても良いと思います。
極論を言えば、学校の教員というのは個々の教員により業務量が異なりますので、担任かどうか、どんな役職についているか、授業数はどのくらいかで給与を変動させるべきだと思います。たとえば、担任も持っておらず、授業も少なく、毎日定時退勤する教員に13%の調整額は必要でしょうか。必要ないですよね。ですので、面倒な事務的作業は発生しますが、担任手当をつけるなら、それも含め、その年度の教員一人一人の役職等に応じた給与体系を整備してほしいと思います。財務省が言う、いわゆる「メリハリのある給与体系」ですね。
管理職手当は、月5,000円~10,000円の増額とのことです。管理職手当については経験がありませんので、実態はわかりませんが、これも担任手当と同じくもう少し上げても良いのではと思います。
なお、以前の記事に書きましたが、今回の答申において、教諭と主幹教諭の間に「新たな職」を創設することが決まっています。「新たな職」は令和8年(2026年)4月から任用されるようであり、教諭より月6,000円程度増額するとのことです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
教員の処遇に関しては今後、「教職調整額の増額」、「担任手当の新設」、「管理職手当の増額」がなされるようです。個人的には、上にも少し書いたように一律に増額するのは反対ですが、まずは、待遇面を良くして、若い人材を確保しようという狙いなのだろうと思います。
次年度の予算要求の資料が掲載されているページのリンクを以下に貼りますので、より詳しく見てみたい方はご覧ください。教員の処遇改善は「初等中等教育局」が担当です。