働き方改革を進めるために文科省が訴えたいこと

教育政策

 昨年度から約1年かけて中央教育審議会で議論され、8月末に答申された「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の主な内容については、これまで本ブログにおいても紹介してきたところですが、9月30日付けで各都道府県等あてに文科省から通知文が出されましたので、今回はこれについて紹介したいと思います。

 本記事を読めば、今回の通知文の内容(今回は前文のみ)と文科省が訴えたいこと(推測の部分もありますが)がわかると思います。

 結論を先に述べれば、「学校の働き方改革を進めるには文科省を含め、様々な主体が動く必要があること」、「学校の働き方改革のカギを握るのは校長であること」です。

 以下、詳しく見ていきます。

通知文の構成

 今回の通知文は、全体で97ページものボリュームになっており、プリントアウトするだけで嫌になると思います💦

 97ページの内訳は、通知文が12ページ、答申が73ページ(関連資料含む)、別添資料として令和7年度の予算要求関連資料(いわゆる「ポンチ絵」と呼ばれるもの)が12ページあります。

 通知文12ページの構成は、まず前文があり、その後は「学校における働き方改革の更なる加速化」・「学校の指導・運営体制の充実」・「教師の処遇改善」・「教師を取り巻く環境整備の着実な実施とフォローアップ」の4つの項目から構成されています。一度に全て紹介すると長くなりますので、今回はまず前文について紹介したいと思います。

 なお、あて先は「各都道府県知事」・「各都道府県教育委員会教育長」・「各指定都市市長」・「各指定都市教育委員会教育長」となっていますので、指定都市以外の市町村立学校に本通知文が下りてくるのは少し時間がかかるかもしれません。

答申が出された背景

 前文の書き出しは、以下のような構成になっており、今回の答申が出された背景を簡潔に記しています。

平成31年の通知により、学校の働き方改革を進めてもらったこと

その結果、教員の時間外在校等時間は減少していること

しかし、依然として、時間外在校等時間が長い教師もいること

 このような現状があったため、文科省が中教審に諮問し、冒頭に述べた答申がなされたことが最初の段落には書かれています。

本通知において文科省が訴えたいこと

 2つめの段落では、答申の重要な部分が抜粋して書かれています。

 まず、本答申においては、

①学校における働き方改革の更なる加速化

②教師の処遇改善

③学校の指導・運営体制の充実を一体的・総合的に推進する必要があること

 が提言されており、その上で「教師を取り巻く環境整備に向けて、改めて教育に関わる全ての者の総力を結集して取り組む必要がある」と書いています。この部分が文科省が最も訴えたいことではないかと思います。つまり、「働き方改革をしろ、と国にばっかり言うな」ということです。これは本ブログでも書いてきたように、そのとおりなんですよね。他人のせいにしないで、自分でできることは自分ですべきです。

 そして、この段落の結びとして、「学校や地域、教職員や児童生徒等の実情を踏まえつつ、必要な取組の推進をお願いします」と各都道府県教育委員会等にお願いしています。

 「実情を踏まえつつ」は国の通知文等の言い回しでよく用いられる文言ですが、これが難しいんですよね。何故ならこれは「自分たちで考えてやってね」ということと同じ意味だからです。

 前例がないことは、周囲の状況を参考にしたいと思うのが人間の性質です。ところが、学校数や児童生徒数などは自治体によって異なるため、モデルケースを探しにくくなります。校長や行政機関の管理職等、そのポストに数年しかいないとわかっている人の多くは前例踏襲・現状維持を好む傾向にあるのですが、そういった組織のトップの主体性や判断力、行動力等がカギを握ることになります。

教育委員会と校長の力量が問われる「締め」

 文科省の通知文の締めは、一般的には「管理下の関係機関に周知してください」のようなものが多いのですが、今回のはそうではありません。

 まず、「各地方公共団体の長におかれては、各教育委員会が進める取組について、積極的な御支援をお願いします」とあり、首長に対して教育委員会の支援をするようお願いしています。これは正直、漠然としているなという印象です。言いにくい気持ちも十分わかりますが、「財政上の措置等」のような文言を入れてほしかったですね。行政機関というのは結局のところ、首長部局の財政措置がないと新たな仕事ができないからです。

 次に、「各都道府県教育委員会におかれては、域内の市町村長及び市町村教育委員会に対して、本件について周知を図るとともに、十分な指導助言に努めていただくようお願いします」とあり、周知だけではなく、指導助言をするよう求めています。

 さらにこう書かれています。

各都道府県教育委員会及び各指定都市教育委員会におかれては、(中略)学校における働き方改革を含む教師を取り巻く環境整備を進める上では校長等の管理職の役割も大きいことから、校長等の管理職がその権限と責任を踏まえて適切に対応できるよう、必要な指示や支援等に努めていただくようお願いします

 この部分が最も大事なのではないかと思います。つまり、学校の働き方改革のキーパーソンは校長であると言っているのです。校長がマネジメント力を発揮し、適切な人材配置や業務分担、業務の削減・効率化、勤務環境の整備などを進めることで確実に教員の負担は軽減されていきます。おそらく、校長が積極的に学校マネジメントをしている例はほとんどないと思います。

 また、さらに、「各都道府県教育委員会におかれては、本件について域内の市町村が設置する学校に対して周知が図られ、校長がその権限と責任を踏まえて適切に対応できるよう支援等をお願いします」とあります。指定都市以外の各市町村教育委員会にも、校長の役割についてしっかり書いています。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 以前も書きましたが、学校の働き方改革は文科省のみが進めるものではなく、様々な主体が進めなければなりません。そして、学校においてそのカギを握るのは校長しかいません。そのメッセージが、今回紹介した通知文に色濃く出ていると思います。

 このような通知を都道府県教育委員会や市町村教育委員会、そして学校がどのように活用するかで教員の労働環境は変わっていきます。しかし、これまで述べたきたように、上の動きばかり待っていても働き方改革はなかなか進みません。自分でできる業務の効率化や削減をしてみましょう。

 以下、通知文のリンク先です。今後も紹介していきますが、興味のある方は覗いてみてください。

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