先日(11月3日)、「教職調整額を廃止し、公立学校教員に時間外勤務手当を支給することを政府が検討し始めたこと」を報道各社が報じました。
ただ、その直後、阿部文科大臣はこの件について「承知していない」とコメントし、報道内容を否定しています。また、財務省案の内容も一部報道されているため、教職調整額の在り方については、各方面からいろいろな意見が出ており、議論の途中であることがわかります。
そこで今回は、突如浮上した教職調整額廃止案の根拠や教員の勤務の実態について書きたいと思います。
本記事を読めば、教職調整額廃止案が浮上した理由がわかると思います。
結論を先に述べれば、教職調整額を13%にすると莫大な財源が必要になるためです。
以下、詳しく見ていきます。
これまでの議論の経過
まず、教職調整額をめぐる、これまでの議論の経過を簡単におさらいしておきます。
教職調整額は現行4%ですが、昨年(令和5年)5月に教員の処遇改善等に関する諮問が中教審になされ、今年(令和6年)8月に文科省に答申されました。
その中で教職調整額は「少なくとも10%以上とすることが必要」とされ、令和7年度予算の概算要求で文科省は財務省に対して、13%に増額することを要求しました。以後、文科省と財務省の間で交渉があっているようです。
なお、教職調整額の13%への増額及びその他の処遇改善については、以下の記事をご覧ください。
廃止案の根拠は?
さて、ここから本題に入っていきますが、今回、教職調整額廃止を検討し始めた根拠として、仮に教職調整額を13%にした場合、国と地方の年間の財政負担が約5,580億円増えるとの見込まれることが背景にあるようです。確かにこの額は大きいですよね。
そこで、現行の4%も廃止し、勤務時間に応じた給与にした方が財政負担は少ないのではないかという考えだと思います。
確かに、この考えには納得できる部分があります。教員の時間外勤務は多い実態がある一方で、定時退勤する教員も一定数います。定時退勤する教員に4%はもちろん、13%の調整額はさすがにもったいなすぎます。働いた分だけ収入を得るのが当然です。
また、教職調整額廃止に連動して、学校管理職に業務管理を徹底させる仕組みを検討する案も出ているとのことです。これも納得です。
学校という組織は、業務内容を個人に任せすぎています。全国の一部の学校では、管理職が率先して業務改善を進めていますが、おそらくほとんどの管理職は教員に任せっぱなしで、組織的な業務改善をしていないと思います。
管理職自身も「自分がそうだったから」という部分もあり、個人個人の業務に関して干渉や指導をしていないと思いますが、今の時代、児童生徒のために自分の時間を犠牲にするという考えは受け入れられなくなっています。学校管理職には教員の時間外勤務を削減するための「業務マネジメント」という能力が必要になってきています。
教員の業務内容と勤務時間のおかしさ
ただ、そもそも、学校の教員というのは、勤務時間の大半、授業と児童生徒対応をしなければならず(特に小学校教員)、その他の業務にあたる時間が設定されていません。だから、勤務時間が長くなるのです。
授業をするための準備(教材研究)すら、勤務時間内にすることが難しく、ましてや学校行事等があれば、その多くを勤務時間外にせざるを得ません。
この基本的な考え方が間違っています。本来なら教材研究も含め、勤務時間内に業務が終わるようにしなければならないはずです。
この状況を改善するには、教員を増やし、授業をしない空きコマを増やすしか方法はないのですが、教員定数を改善するための壁は高く、また、仮に改善されたところで昨今、なり手がおらず、教員の確保が難しい状況です。
では、どうすれば良いかというと、徹底的に業務改善するしかありません。学校行事等はその目的を再確認し、本当に必要なことのみ実施したり、規模縮小したりするなどし、また、大きな学校行事の前などは授業時間を削減し、その準備にあてることなども必要になってきます。
そのために上にも書いたように管理職が率先して業務改善を進めていくしかありません。また、教員個人個人も前例踏襲を見直し、業務改善を進める必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
教職調整額廃止案の根拠は、仮に13%に引き上げた場合、財政負担が大きくなるからということです。
ちなみに、財務省はいきなり13%にするのではなく、業務削減を進めていくことを条件に段階的に引き上げていくことを提案しているようです。この件についてはまた別の機会に書きます。今後の議論がどうなっていくのか非常に注目です。
なお、教員に時間外勤務手当が支給されない理由については、以下の記事を書いていますので、参考にされてください。