「分かりやすい」次期学習指導要領のポイント(デジタル編)

学習指導

 前々回の記事で、次期学習指導要領の「分かりやすさ」と「使いやすさ」のポイントについて書きましたが、先日(令和7年2月28日)開かれた第3回の特別部会において、デジタル面での「分かりやすさ」に関する資料が提出されていましたので、今回はこの資料を参考に、次期学習指導要領策定において、デジタル面での目指している方向性について書きたいと思います。

 本記事を読めば、次期学習指導要領のデジタル化の方向性のポイントがわかると思います。

 結論を先に言えば、学習指導要領のサイトを視覚的にわかりやすくし、学習指導要領コードを活用することを検討しています

 以下、詳しく見ていきます。

資料提供者と学習指導要領の現状

 まず、今回参考にする資料を作成している方について書きます。

 資料作成者は、東京学芸大学教職大学院教授の堀田龍也氏です。ICT関連の記事や書籍では非常によく目にする全国的に著名な方です。現在は大学にお勤めですが、小学校勤務の経験もあり、現場の実態もよくわかっておられる方です。

 さて、氏は今回の資料の最初に「学習指導要領を参照する現状」として、以下の点を指摘しています。

研究授業の準備の時だけ参照することが多いのでは

むしろ学習指導要領解説の方を参照するのでは

教師は教科書会社作成の教師用指導書をもっとも参照するのでは

 これはまさに前々回の記事で僕が書いていることとほぼ同じですね。書いておきながら、自分とその周りの人たちのみの傾向と思っていましたが、やはりこれは全国的な傾向だということがわかりました。

 そのくらい学習指導要領は難解であり、日常使いしにくいものなのです。批判を恐れずに言えば、教科書は学習指導要領をもとに作られているため、教科書を日常使いして何が悪いのかと僕は以前から思っているのですが。

諸外国の事例

 では、ここから本題に入っていきます。資料の中に学習指導要領をデジタル化している諸外国の事例がありますので、まずはこれについて紹介します。

 1つめは、前回も登場したカナダのブリティッシュコロンビア州です。

 カナダでは、学習指導要領に相当するサイトにて、「教科」や「観点」とキーワードを掛け合わせてカリキュラムを検索することが可能になっているとのことです。

 検索結果の画面には、前回も紹介した「ビッグアイデア(各学年修了までに理解すべき重要な概念)」や「教科別コンピテンシー(必要不可欠とされる内容)」などとともに「ビッグアイデア」に沿って児童生徒が知るべき内容が構造的に表示されており、とても見やすくなっています。

 また、「詳細」ボタンを押下することで詳しい情報が表示されるようになっており、「この単元を教えるときはこのようなことを重点的に教える」ということを理解しやすくなっているように思います。

 次に、オーストラリアの事例です。

 オーストラリアでは、学習指導要領に相当するサイトがビジュアル化しており、解説動画も掲載されているとのことです。また、カリキュラムの3つの柱である「7つの汎用的能力(Literacyなど)」、「8つの学習領域(Scienceなど※教科に相当)」、「3つの領域横断的優先事項(sustainability(持続可能性)など)」が三次元で表現されており、視覚的に見やすくなっています

 各学習領域の詳しい内容や教える内容についても、それぞれの項目をクリックしていけば、より詳しい内容が見られるようになっています。堀田教授の資料にURLが添付されていましたので僕自身も実際見てみましたが、非常にわかりやすいものだと感じました。

 このような国々のサイトを参考に我が国もわかりやすいサイトを作ってほしいですね。

コード化の現状と課題

 もう一つは、学習指導要領のコード化の現状についてです。

 学習指導要領は学校種、教科、学年等の検索が容易となるよう、16桁のコードが割り当てられています。例えば、第6桁が「6」のコードだけ抽出すると、6年生の学習内容が表示されるそうです。僕自身、1回も使ったことがないため、そんな機能があるとは知りませんでした💦

 コードを導入した当初は、児童生徒の学習者用デジタル教科書から、関連する動画を見たり、他社のデジタル教材を見たり、デジタル問題集を解いたり、また、児童生徒が解いた問題をAIで採点することも想定していたようです。

 しかし、資料の中で、「学習指導要領コードを介して教科書や教材等を繋げることに課題が残る」としており、例えば、動画視聴の面では一部実現できている現状はあるものの、より多くの動画を視聴しようとすれば、学習指導要領コードが粗いことが要因となり、関連する動画のヒット数が多くなりすぎるということもあるようです。

 また、AIで採点することはできるものの、各教科や各学習内容において、学習指導要領が求める水準を満たしているかを判定することは困難なようです。

 これを解決するためには「教科書の小単元レベルのキーワード等のメタデータが学習指導要領コードと共に公に提供される必要がある」と堀田教授はしています。どれくらい難しいものかは想像つきませんが、かなり難しいような気がします。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 次期学習指導要領のデジタル化に向け、文科省は学習指導要領のサイトを視覚的にわかりやすくし、学習指導要領コードを活用することを検討しています

 ちなみに、今回は以下のページの「資料1-2」から引用しています。興味がある方は、より詳しい内容が掲載されていますのでご覧ください。

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