次期学習指導要領の「探究的な学び」の方向性

学習指導

 先日(令和7年5月22日)開かれた中教審の特別部会において、次期学習指導要領における「探究的な学び」をどのように取り扱うかについて議論されたようです。

 そこで今回は、この件について、文科省の資料をもとに書きたいと思います。ニュース等でも報道されていましたので、概要をご存知の方も多いと思いますが、ご覧いただくと幸いです。

 本記事を読めば、次期学習指導要領における「探究的な学び」の方向性がわかると思います。

 結論を先に言えば、情報活用能力の充実を進めながら、その力を「総合的な学習の時間」等の中で活用させることをイメージしています

 以下、詳しく見ていきます。

「探求的な学び」の現状

 「探究的な学び」はご存知のとおり、現行学習指導要領の中で、小中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」を中心に行われています。

 さらに、中学校では理科や社会・道徳、高校では地理・歴史探究・古典探究・理数探究等にも位置づけられており、一般的に、①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現という流れで行われています。

 「総合的な学習の時間」の導入から20年以上経過しましたので、学校現場の先生方にとっては児童生徒に取り組ませたことはないという方はいらっしゃらないと思います。

 全国学力調査のアンケートによれば、「探究の課程を意識した指導をしている」と回答した教員は年々増加傾向にあり、「どちらかといえばしている」も含めると9割超にのぼるそうです。

 また、全国学力調査の児童生徒へのアンケートによれば、探究的な学びに積極的に取り組む生徒は、以下の特徴があるとしています(一部抜粋)。

授業の中で課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいる

授業で学んだことを次の学習や実生活に結び付けて考えたり、生かしたりできる

地域を良くするために何かしてみたいと思っている

 このような姿勢は、これからの変化の激しい時代を生き抜くために大事なこととされています。そのため、「総合的な学習の時間」を導入したことは、一定の成果が出ていると国は評価しています。

「探究的な学び」の課題

 一方で、文科省は以下のような課題を挙げています。

①小中高全体として、カリキュラムの設計に困難を感じる、授業が調べ学習で終わってしまう等の声も聞かれ、育成を目指す学びの姿が十分な共通認識に至っていないとの指摘もある。

②探究と相性のよいICTの活用の伸びしろを示唆するデータもある。

③探究テーマとして、職業や福祉、国際理解が多いが、ものづくりや科学技術が少ない等、偏りが見られる。また、学校で設定した総括的テーマが重視され、個人の興味関心が十分に考慮されていない例も見られる。

 ①については、そのとおりだなと思います。総合=調べ学習というイメージがあり、「探究」という言葉からイメージできる活動までは行き着いていないというのがほとんどの学校ではないでしょうか

 ②について、確かにそのとおりでしょう。ICTを使うことで、情報の収集や分析、整理、表現などは効率的にできると思います。現在でも一定程度できているでしょうが、さらに伸びる可能性があるとは思います。

 ③については、学校で総括的なテーマにした方が計画等の見栄えも良く、指導もしやすいという現実はあります。個人の興味関心に沿って実施すならば、理科の自由研究と同じで、学力が高い児童生徒は質が高くなるテーマを設定するでしょうが、学力が厳しい児童生徒は適切なテーマすら設定できず、テーマ設定までに相当な指導や支援の時間がかかると思います。

 話が逸れますが、総合に限らず、現在の国の学習指導に関する施策は、一般の公立学校の学級に半数もいない学力が高い児童生徒を対象に設計されている気がします。そのような生徒は、そもそも教師の指導すらいらないほどの力を持っている場合もあります。しかし、実態として一つの学級には教師が何らかの手立てをしないと自ら動くことのできない生徒が多く、そういった生徒への指導・支援に時間がかかるのです。

「探究的な学び」の今後の方向性

 さて、以上のような現状と課題を踏まえ、以下のように変更することをイメージをしています。

(出典:文部科学省HP)

 小学校の「総合的な学習の時間」の中で「情報の領域」を追加し、情報活用能力を育むとしています。別スライドにありますが、具体的には情報の収集力や分析力はもちろん、情報モラルや共同編集の仕方、プログラミングとしています。ただ、これらについては、もう既に取り組んでいる学校が多いのかもしれません。

 中学校が真新しい感じがしますが、現在の「技術・家庭科」という教科を2つの教科に分離し、現行の技術分野において情報技術をより深く、広く学ぶとしています。そして、技術分野で身につけた力を総合的な学習の時間で活用するとしています。

 高校は、まだ検討の途上という感じが強いですが、小中学校との系統性を踏まえて、更に内容を充実させる方向です。情報教育に系統性を持たせることについての方向性は、以前の記事を参考にしてください。

 時代の変化や要請に応じた教育を充実させていくことは当然のことと思いますが、肝心なことは学校現場の負担にならない仕組みを構築することです。資料の中にも、「教師の負担軽減」という文言が出てきますので、国もいくつかの案を考えていると思いますが、学校現場に丸投げせず、必要な人材の配置などをしてほしいと思います。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 今後の「探究的な学び」の方向性は、情報活用能力の充実を進めながら、その力を「総合的な学習の時間」等の中で活用させることをイメージしています

 より詳しく見て見たい方は、以下のリンク先をご覧ください(資料1-1を参考にしています)。

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