シリーズ4回目です。
今回も、平成31年3月に出された、いわゆる「3分類」の2つめの項目「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」について、学校現場の実情を踏まえて個人的な意見を書いてみようと思います。
「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」は、以下の4つです。
⑤調査・統計等の回答等(事務職員等)
⑥児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
⑦校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
⑧部活動(部活動指導員等)
※( )内は教師以外の担い手の例です
このうち、⑤については前々回書き、⑥と⑦については前回書きましたので、今回は⑧について書こうと思います。
部活動は、教員の働き方改革の中で最も話題に上がりやすいものであり、教員の業務から切り離すものとして最も適切であるかのようでありますので、これまでも度々議論になってきました。そして、ご承知の方も多いと思いますが、既に一定の結論が出ています。ただ、今のところ現場はほぼ変わっていませんので、僕個人のこれまでの経験も踏まえ、記そうと思います。
まず、今年度から進められている改革について触れておきましょう。
国は、今年度から中学校の休日の部活動の地域移行を進めています。議論の段階では「令和5年度から7年度までの3年間を移行期間とする」としていましたが、おそらく、3年間で完全に移行するのは難しいという声が多数上がったのでしょう、最終的に「3年」という具体的な数字は消えました。
これは、地域による差が大きいことが原因だと思います。すぐにでも(あるいは既に)移行できる(移行した)地域もあれば、なかなか移行が難しい地域の差が大きいと思います。前者は地方であり、後者は都市部であることが多いと思います。移行がスムーズに行くためにとりわけ大切になってくるのは、人と場所です。休日のみの指導ができる地域人材と、適切な場所があれば、とりあえず始めることは可能だと思います。地方だと特に場所は潤沢にあり、都市部ではなかなかそうはいかないと思います。そのため、「3年」という具体的な期間を設定することを諦めたのだと思います。
さて、そもそも、部活動の地域移行に関して、現場の雰囲気はどのようなものかというと、ネットニュースなどを見ていると、負担ばかりが報道されている感じがありますが、それは一部に過ぎません。確かに、そう感じている教員も一部います。しかしながら、極論を言えば、部活動の指導をしたいという目的のために教員を目指した人もいるほど、部活動指導を魅力的なものと感じている教員がいるのも事実です。そのため、もし、部活動が完全に教員の業務から切り離されてしまうと、やりがいをなくしてしまう教員が出てくるかもしれません。この現状が部活動の地域移行を難しくしている部分でもあります。
実は、かつての僕も部活動指導に魅力を感じていた人間の一人でした。臨時採用時代、部活動指導ばかりしたことにより、採用後の個人的な目標は「全国大会に出場すること」と考えていたほどです。それだけ、部活動指導には魅力があります。それはなぜかというと、学級は「集められた」集団である一方、部活動は「集まった集団」であり、そこに所属する生徒のモチベーションは全く異なるからです。
例えば、学力を上げることや学校行事で結果を出すことより、部活動で結果を出すことの方が容易で目に見えてわかりやすいのです。子供の学力は熱心に指導しても、そう簡単に向上していくものではありません。しかし、部活動におけるスキルは時間をかけて指導すればするほど身についていくものが多いのです。そして、時間をかけたほど結果が出ることが多いので、部活動指導に没頭する教員がいるのです。つまり、熱心に指導する → 子供のスキルが伸びる → 結果が出る → さらに熱心に指導するという無限ループにはまっていくのです。
しかし、これは自分が経験のある、または興味があるスポーツ等の場合です。僕もかつて経験がありますが、経験も興味もないスポーツ等の担当になったときは苦痛でしかありません。しかも、その学校が強豪校であり、保護者や地域の期待が大きい場合は最悪です。保護者や地域は「先生は未経験だから」なんて優しく見てくれません。「先生は私たちの子供のために時間をかけて当然」と思っています。
こういう境遇に苦しんだ人たちがツイッター等で声を上げ、部活動は教員の業務から切り離していく流れができつつあります。しかしながら、「部活動はしたいのにな…」と考えている教員も一定数います。
長くなりましたので、今回はこれで終わりにします。次回は具体的な地域移行に関する意見を記そうと思います。