【ブックレビュー】世界の教育はどこへ向かうか

ブックレビュー

 「この著者の本なら、絶対に買わなきゃ」という本が久々にありました。

 白井俊著『世界の教育はどこへ向かうか』(中公新書、2025年)です。今回はこの本について紹介したいと思います。

 本記事を読めば、この本の構成や特徴がわかると思います。世界や日本の教育トレンドに興味がある方や近年の日本の教育に疑問を感じている方は、きっと面白い1冊だと思います。

 以下、詳しく見ていきます。

著者について

 まず、著者について紹介します。

 著者の白井俊氏は1976年生まれの埼玉県出身の方です。東大法学部を卒業後、米コロンビア大学ロースクールの修士課程を修了、その後、文科省に入省し、初等中等教育局等、様々な部局で勤務され、徳島県教育委員会にも出向しています。現在は、内閣府に出向しているとのことです。大変華麗な経歴ですね💦

 しかし、これだけではありません。白井市の経歴で注目すべきことは、パリにあるOECD(経済協力開発機構)本部での勤務経験もあることです。そのときの知見をまとめた『OECD Education2030 プロジェクトが描く教育の未来』(ミネルヴァ書房、2020年)が大変刺激的で面白かったので、今回、白井氏の新著が発売されるにあたり、すぐに読んでみたいと思いました。同書については今回の記事で紹介しませんが、世界の教育トレンドに興味がある方はお読みいただくと、大変勉強になる部分が多いと思います。

本書の構成

 次に、本書の構成について紹介します。本書は以下の章から成り立っています。

序章 変わる世界の教育

第一章 教育は何を目指すべきか

第二章 「主体性」を捉え直す

第三章 子供たちに求められる「能力」

第四章 「探究」の再検討

第五章 何をどこまで学ぶべきか

終章 これからの教育はどこへ向かうか

 以上、7章の構成です。

 なお、本書の副題は「能力・探究・ウェルビーイング」ですが、これらについては第一章で「ウェルビーイング」を、第三章で「能力」、第四章で「探究」について扱っています。

 本ブログのタイトルの一部にしている「ウェルビーイング」の意味なども以前の記事で紹介しましたが、世界的議論の中での文脈も紹介されています。

 また、各章は独立して読むことができ、例えば、「主体性」に興味があるならば、第二章から先に読むことをオススメします。

本書の特徴

 では、ここから本書の特徴を紹介します。

 本書の最大の特徴は、OECD勤務経験で得た知見を踏まえ、著者が日本の教育の現状や方向性について考察している点です。おそらくですが、OECDでの勤務経験がある方は日本でもそう多くないと思います。

 教育というのは、誰もが受けてきた経験をもつので、誰もが何かしらの意見を持っていますが(「一億総評論家」とも言いますね)、外側から見る視点というのはやはり多くの学びや気付きがあります。

 特に面白かったのが、第二章と第五章です。近年のトレンドである「主体性」と「探究」について疑問を感じ、考察しています

 「主体性」については、著者がある学校を訪問した際、生徒の活動や取組の様子について、教師が「主体性」という言葉を使ったのを聞き、本当にそれが「主体性」と呼べるのか疑問に感じたとのことです。以下のような事例です。

生徒が宿題を期日までに提出できること

②討論の授業の際、授業時間終了後も生徒の討論が続いたこと

 皆さんはどう思いますか? このような状況を生徒の「主体性」があると言えますか?

 この疑問を著者は、国際的な視点から問い直しており、その中で、最近よく聞く「エージェンシー」という言葉についても解説しています。果たしてこれらの事例が「主体性」があると言えるのか、気になる方は本書をお読みください。

 また、「探究」については、やはり筆者がある学校を訪問した際、お茶やお城などについて、生徒が興味のあることをそれぞれ調べていて、生徒たちが口々に「探究の授業は楽しいです」と語っているのを聞き、本当に探究と呼べるのか疑問に思ったとのことです。

 実際、このような探究活動は全国のほとんどの学校でされているのではないでしょうか。僕自身も似たようなことをさせたことがあります。しかし、多くの場合、生徒はネット上の情報をコピペするだけの活動に終わってしまい、細かいことを突っ込んで聞くと「わかりません」とあっさり言います。

 そこで、著者はやはり国際的な視点から「探究」を問い直しており、アメリカの事例を用いて「探究」の在り方や方法を再検討しています。実のある探究活動を行っておられる方もいらっしゃると思いますが、僕と同じように「探究」や「総合的な学習の時間」の活動がイマイチしっくり来ていない方は本章をお読みになることをオススメします。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 今回は、白井俊著『世界の教育はどこへ向かうか』(中公新書、2025年)について紹介しました。世界や日本の教育トレンドに興味がある方や、「主体性」や「探究」など、近年の日本の教育トレンドに疑問を感じている方は、きっと面白い1冊だと思います。

 また、OECDの教育政策に興味を持たれたなら、『OECD Education2030 プロジェクトが描く教育の未来』(ミネルヴァ書房、2020年)をお読みになることをおススメします。

タイトルとURLをコピーしました