教職調整額はこう上がる!

教育政策

 先日(令和6年12月24日)、加藤財務大臣と阿部文部科学大臣が協議し、教職調整額の引き上げ等について合意しました。

 本件については多くのメディアで報じられていますが、本ブログでも議論の経過を書いてきましたので、これまでの経緯も含め、教職調整額の引き上げについて書きたいと思います。

 本記事を読めば、教職調整額が今後どうなるのかわかると思います。

 結論を先に言えば、次年度(令和7年度)から段階的に1%ずつ引き上げ、令和12年度に最大10%まで引き上げることになりました

 以下、詳しく見ていきます。

1年に1%ずつ調整額が上がる

 冒頭でも書きましたが、今後、令和12年度(2030年度)まで教職調整額が1年に1%ずつ上がっていくことになりました。以下のようになります。

令和7年度(2025年度)→ 5%

令和8年度(2026年度)→ 6%

令和9年度(2027年度)→ 7%

令和10年度(2028年度)→ 8%

令和11年度(2029年度)→ 9%

令和12年度(2030年度)→ 10%

 段階的に予算を拡大していくやり方は、小学校の35人学級導入と同じです。一気に引き上げるのではなく、段階的に上げていく方が財政負担が少ないのでしょう。

 なお、今回、教職調整額の引き上げと合わせて、令和8年度(2026年度)から中学校も順次35人学級とすることを合意したとのことです。これについてはまた別の機会に書きたいと思います。

これまでの議論の経緯

 さて、ここからは教職調整額の引き上げが実現するにいたった経緯について書きたいと思います。

 発端は昨年(令和5年5月10日)、自民党の特命委員会が教育人材確保に関するプランを発表したことです。この中で、「教職調整額を10%にする」との言葉が出てきました。これについては、以下の記事を参考にしてください。

 その後すぐに(5月22日)、当時の文科大臣が教員の処遇改善を含めた人材確保のための環境整備について中教審に諮問しました(「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について)。これはもともとのスケジュールどおりだったのか、自民党の圧力があったのかはわかりません。

 それからおおよそ月に1回のペースで中教審の会合が今年(令和6年7月)まで計14回開かれ、文科省に答申されました(令和6年8月27日)。その中に自民党の案どおりの「教職調整額は少なくとも10%以上とする」という文言が含まれています。中教審で議論した結果とはいえ、出来レース的な感があります。

 ところで、中教審の議論の中で、教職調整額について規定している給特法をどうするかという議論も一時期ありましたが、これについては廃止しないという結論になりました。その理由については以下の記事をご覧ください。

 

 中教審からの答申を受けた文科省は、次年度の予算要求を財務省に対して行いました。答申どおりの10%を要求するかと思いきや、なんと文科省は13%への引き上げを要求しました。これには驚きました。文科省も独自の考えを出したいと思っていたのかもしれませんし、交渉を進めやすくするため、あえて高めの数字を出したのかもしれません。

 その後、文科省と財務省の間で折衝があり、財務省の対案やそれに対する文科省の反論も出てきました。一時期は、教職調整額自体を廃止するという政府案も出てきました。このへんのことを詳しく知りたい方は以下の記事を参考にされてください。

 13%の教職調整額を財務省が強く反対した理由は以下の記事をご覧ください。

 教員の業務や給与に関する財務省の考えについては以下の記事をご覧ください。

 財務省の提案に対する文科省の反論については以下の記事をご覧ください。

 こういった議論の末、冒頭にも述べたように、財務・文科両大臣の合意に至りました。

教職調整額の増額と自民党の関係性

 教職調整額が引き上げられるのは初めてであり、しかも、給特法が制定されてから実に約半世紀経過していますので(1971年に制定)、引き上げられたこと自体、大変歴史的なことだと思います。

 ここに至るまで、教員の処遇改善について声を上げ、地道な活動をされた方々及び文科省の関係者の方には感謝しかありません。

 ただ、あまり表には出ない話ですので、推測の域ですが、この件の発端と結末については自民党の裏金問題が大きく影響しているのではないかと思います。

 冒頭にも書いた、教職調整額の増額を言い出した自民党の特命委員会には故安倍元総理に近い政治家が多く、当時の自民党内では大きな力を持っていました。その方々が言い出したことだったため、文科省は動かざるを得なかったのかもしれません。

 しかし、その後、裏金問題が発覚し、そして、裏金問題に関わっていた政治家の多くは故安倍元総理に近い政治家だったため、この方々は急速に力を失っていき、さらに今年の衆院選で当選できなかった方もいます。

 強力な後ろ盾を失った文科省に対して、財務省が対案を出してきた時期は衆院選の時期と重なります。財務省としては絶好のタイミングだと思ったのだと思います。それに対して文科省も反論をしますが、正直僕から見ても苦しいものに見えました(上の記事参照)。

 結局、今回の結末はどちらかというと財務省の対案に近いものです。

 真偽のほどはわかりませんが、政治力学がゼロということはないかとも思います。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 教職調整額は次年度(令和7年度)から段階的に1%ずつ引き上げ、令和12年度に最大10%まで引き上げることになりました

 今回は、昨年から今年の動きを振り返ったため、長くなりました。読みにくかった部分もあるかと思いますがご容赦ください。

 これで教員の処遇をめぐる動きは一段落ついたことになりますので、今後は他のことも書いていきたいと思います。

 今年、本ブログをご覧いただいた皆様、ありがとうございましたm(_ _)m

 来年もぜひよろしくお願いします。

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