学校の働き方改革はこう加速化する!

教育政策

 前回紹介した、「質の高い教師の確保特別部会」(第15回)の配付資料の中に「教師の「働きやすさ」と「働きがい」実現プラン」というものがあります。

 これは、昨年(令和6年)に出された中教審答申の一部をピックアップしたものであり、今後の文科省の政策をわかりやすくするために別に作成したものと思われます。

 この中で、学校現場からよく上がる声に対しての文科省の政策が掲載されていますので、今回はこれについて紹介したいと思います。

 本記事を読めば、学校の働き方改革に関する今後の文科省の政策がわかると思います。

 結論を先に言えば、①働き方改革の現状の「見える化」、②校長のマネジメント力の強化、③業務適正化の一層の推進になります

 今回は以下の2つの声に対しての文科省の政策です。

学校現場の業務量を減らしてほしい

健康に働くことができる職場環境を整えてほしい

 以下、詳しく見ていきます。

現状を客観的に「見える化」する

 まず、業務量管理や健康確保措置実施計画などを盛り込んだ働き方改革実施計画を策定・公表するとのことです。主体は都道府県教育委員会かと思います。

 この中で、時間外在校等時間などの目標を設定するとのことであり、時間外在校等時間を含む「実施計画」の実施状況を公表し、現状を客観的に「見える化」するとのことです。

 「見える化」することで、自治体ごとの時間外勤務の状況がわかるようになり、時間外勤務が長い自治体にとっては戒めになるとは思いますが、以下の2点が懸念されます。

①全国学力調査のように自治体間の競争意識が生まれないか

②教育委員会等に報告するために業務が増えないか

 ①については、良い意味で競争し、時間外勤務が少ない自治体の事例を参考にすると良いのですが、数字を少なく見せるために、たとえ業務が残っていても退勤するように管理職が言うのであれば問題です。

 ②については、おそらく現在はタイムカードと勤務時間管理システムが導入されている学校が多いかと思いますが、それを教育委員会等に報告するのは教頭の仕事です。教頭の業務が増えることが予想されます。また、もし、タイムカードが導入されていない学校があれば、毎日出勤時間と退勤時間を入力等しなければならず、面倒だと思うことでしょう。

 なお、プランの中には「首長部局との連携」、「地域や保護者とも共有」という文言もあります。「首長部局との連携」は総合教育会議の場で「働き方改革実施計画」の報告をするなど、各自治体の教育委員会事務局が首長部局との連携を密にすることのようです。「首長部局」や「総合教育会議」については、教育行政に関する用語であり、説明が長くなりますので省略します。

 「地域や保護者とも共有」は、学校運営協議会の承認を得て、校長が働き方改革を進めていくとのことです。

校長のマネジメント力の強化

 本ブログで何度も書いているように、働き方改革のキーパーソンは学校長です。働き方改革を進めるためには、学校長が組織のトップとして、いかに職員の勤務状況や健康維持を管理していくかがとても大切です。

 そこで文科省は、校長のマネジメント力を高めるため、以下の4つのことをするとのことです。

①校長の育成指針に働き方改革に向けたマネジメントの重要性を位置付け

②校長研修におけるマネジメント力強化の推進

③校長の人事評価に働き方改革に係る観点の導入を推進

④教育委員会による勤務時間モニタリング

 良い政策に思えますが、①と②は形だけのものになる可能性が高いですが、③は時間外勤務時間が公表されるのであれば、校長としては気になるところでしょう。マネジメントをしないのであれば、教員の時間外勤務は長くなる一方ですので、校長が必要な業務と不必要な業務を仕分けすることが大切になってくると思います。

 ④に関しては、実態としては教頭が指導を受けるのではないかと思います。

 いずれにしろ、「あがりの職」とも言われ、退職まで平穏無事に過ごそうとしている校長はマネージャーとしての自覚をもち、所属職員のために汗をかくことが必要になってくると思います。

業務適正化の一層の推進

 これは、平成31年に出されたいわゆる「3分類」を徹底していくことをベースにしており、以下のことをするとのことです。

①学校・教師が担う必要のない業務の明確化と周知

②標準を大きく上回る授業時数の見直し

③勤務間インターバルの導入促進

 ①は、改めて確認する必要があり、学校・教師がしないことを徹底していくことが大事です。さらに、「周知」が大事ですよね。「これは学校ではしませんよ」ということを保護者や地域に知らせなければなりません。そういう発信力も校長に求められる力かと思います。

 ②は、こういう学校は少なくなってきているとは言え、もしあるのであれば、削減する必要があります。これも教務主任レベルではしにくいため、校長が積極的に働きかけていくことが大切です。

 ③は退勤時間と出勤時間の間を一定時間確保するというものですが、導入されても、徹底されないのではないかと思います。退勤時間が遅くなり、翌日に授業が入っているのであれば、ほとんどの教員は通常どおり出勤するのではないかと思います。

 この他にもありますが、興味がある方は末尾のリンク先をご覧ください。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 今後、文科省は、①働き方改革の現状の「見える化」、②校長のマネジメント力の強化、③業務適正化の一層の推進をしていくとのことです。

 ただ、繰り返し書きますが、実行していくためには校長の力次第だと思います。

 今回の記事に関する文科省の資料は以下のページにあります。興味がある方は覗いてみてください。

 

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