学校の業務に対する財務省の的確すぎる指摘

教育政策

 前回、教職調整額を13%にすることに対しての財務省の反対意見を書きましたが、今回は同じ資料の中から、学校の業務に対しての財務省の指摘について書きます。

 正直なところ、財務省は教育の当事者でないにも関わらず、的を射ているなという部分が多く、さすが、省庁の中でも優秀な方々が集まっている集団だなと感じています。

 今回は財務省の資料の中から、財務省が学校の働き方改革について指摘していることを書きます。

 本記事を読めば、教員が生き生きと働くことができるための業務の削減方法がわかると思います。

 結論を先に言えば、①やりがいの低い業務を縮減すること、②市町村が用務員を配置し、学校の業務を担うことです。

 以下、詳しく見ていきます。

日本が教育にかけるお金は少なくない

 本題に入る前に、資料の冒頭にデータがある日本の教育予算について触れておきます。

 日本はしばしば「教育にお金をかけない国」と批判されることがあることを受けてか、「一人当たりの教育支出はOECD諸国と遜色ない水準」とするデータを提示しています。

 それによれば、日本は教育支出のうち公財政支出の割合は21.8%で、OECD平均の22.3%を僅かに下回っています。これをもって「遜色ない」としていると思われますが、平均は上回ってほしいですよね。

 ちなみに、日本より高い国は、ノルウェー(29.0%)、オーストリア(28.7%)、スウェーデン(25.7%)、フィンランド(24.6%)などで、低い国はイスラエル(20.3%)、オーストラリア(18.4%)、チリ(16.7%)などです。

 日本のGDPを考えると、もう少し上位にいてほしい感じがしますが、財務省としては「平均とあまり差がない」ということを強調したいのでしょう。

やりがいの小さい業務を縮減すべき

 ここから本題に入っていきます。

 財務省は、「教員の不満の背景にある勤務環境等の問題は、「学校業務の内容」と「学校業務と学校リソースのアンバランス」にその原因があるのではないかとしたうえで、「教員の不満の改善には、まずは、「やりがいの小さい(負担感大・重要性小)業務」の縮減が必要」としています。

 そこで具体的に、小中学校への調査をもとにした「やりがいの小さい業務」を以下の3つとしています。

外部対応(保護者・PTA)

部活動・クラブ活動指導

調査・統計への回答

 この3つはよく負担感の大きい業務として出てくるものですよね。

 そこで、これらの業務を学校及び教員から手放すために以下の提案をしています。

いわゆる「3分類」の厳格化

上の3つの業務の更なる縮減・首長部局や地域への移行

授業等の時間を標準授業時数見合いまで厳選

 「厳格化」、「更なる」、「厳選」といった表現を用いているあたり、「これまで文科省は働き方改革を進めてきただろうが、まだまだ進めろよ」ということを言っているようにも思えます。

 なお、資料には、「3分類」の実施状況やイギリス敎育省が通知している「教員が担うべきでないとされている業務」、標準授業時数の超過率などの資料も掲載されていますので、興味があられる方は本記事の末尾にリンク先を貼っていますのでご覧ください。

外部人材の登用は有意ではない

 次に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、学校業務支援員(スクールサポートスタッフ)等の外部人材をこれまで配置してきたものの、教員の在校等時間がそこまで減少していないデータを踏まえ、「外部人材の配置によって、教員(主幹教諭・指導教諭を含む)の在校等時間が有意に減少しているわけではない」としています。

 そこで、「外部人材の配置を教員の業務の縮減につなげる実効的な仕組みが必要ではないか」と提案しています。

 また、「学校の設置管理者である市町村において、交付税算定されている「市町村費負担事務職員」や「用務員」(主事)が十分に配置されていない現状」だと指摘し、教員増によってやりがいの小さい・負担感の大きい業務を担うのではなく、「やりがいの小さい・負担感の大きい学校業務そのものを抜本的に縮減するとともに、担い手として、市町村が「市町村費負担事務職員」や「用務員」(主事)を配置し、教員の負担軽減や時間外在校等時間の縮減につなげるべきではないか」としています。

 これは大賛成です。学校には教員でなくても(教員免許がなくても)できる仕事が山ほどあり、それを誰かに担ってもらうと、教員の業務は確実に減ります。使っていない予算はもったいないだけですので、市町村は確実に配置してほしいと思います。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 教員が生き生きと働くことができるためには、①やりがいの低い業務を削減すること、②市町村が用務員を配置し、学校の業務を担うことです。

 これらのことができるのは、本ブログで何度も書いているように、市町村教育委員会事務局と学校長です

 これらの方々が、事無かれ主義や前例踏襲から脱却し、教員の労働時間を縮減するために主体的に行動することで、我々教員の労働環境は変わってきます。

 いずれも任期が短い方々ですが、教員のウェルビーイングのために汗をかいていただきたいと強く思います。

 なお、財務省の資料のリンク先は以下のとおりです(資料2の文教・科学技術です)。

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