部活動の地域移行が進まない理由

部活動

 昨年度(令和5年度)から「改革推進期間」として取り組まれている「中学校部活動の休日の地域移行」ですが、皆さんの自治体では順調に進んでいるでしょうか。

 おそらく、順調に進んでいる自治体は少ないのではないでしょうか。その状況を示しているかのように、先日(令和6年12月10日)開かれた国の有識者会合において、「地域移行」から「地域展開」へと名称を変更する案が示されたとのことです。

 共同通信の記事によれば、「地域全体で連携するというコンセプトをより的確に表す狙いがある」とか書かれていますが、おそらく「移行」するのは難しいという判断だと思います。

 そこで、今回はなぜ部活動の地域移行は進まないのかということについて分析しようと思います。

 本記事を読めば、部活動の地域移行が進まない理由とその解決策がわかると思います。

 地域移行が進まない理由を先に言えば、①モデルケースが少ないこと、②制度を構築できる人材はそう多くないことです。

 以下、詳しく見ていきます。

モデルケースが少ない

 通常、新しいことをしようとするとき、我々は先行事例を参考にします。これは学校に限らず、どの業界でもそうではないでしょうか。ゼロからアイディアを考えるより、同じようなことをしている事例を参考にし、新しい仕組みを構築する方が時間も手間も省くことができるからです。

 部活動の地域移行においても、全国に約1,700ある自治体は先行事例を参考にしたいところですが、これが難しいのです。なぜなら、地域移行に成功している自治体はあるにしても、学校の数や地域の状況、施設の数、用具の状況等により、地域移行の仕方は異なってくるからです。

 学校数が少ない市町村は多い市町村より移行しやすいと思いますが、ある自治体に1つの中学校しかない場合でも、施設や用具は十分あるでしょうが(施設はもちろん学校を使えば良いでしょう)、おそらく指導者の確保は難しいと思います。

 一方、学校数が多い自治体は、指導者はいるかもしれませんが、学校間の調整に時間がかかると思います。

 このように、地域により状況が異なり、参考となるモデルケースを探しにくく、ゼロから考えることになるため、時間がかかっているのだと思います。

 そういった意味で、地域移行ではなく、現在の資源を最大限活用しながら部活動を継続するとした熊本市の判断は、僕個人としては賢明な判断だと思います。

 なお、熊本市の部活動改革については以下の記事を参考にされてください。

 また、熊本市の部活動改革を関係者がどのように考えているかは以下の記事を参考にされてください。

制度を構築できる人材はそう多くない

 モデルケースがない場合、上述のようにゼロから案を作成する必要がありますが、これが難しいのです。

 まず、案を作成するにも地域の学校の状況を調査し、部活動の設置数や部員数、関わっている指導者(教員や外部指導者等)を把握しなければならないでしょうし、地域の人口動態等も参考にしながら、どのように移行していくかということを考えていかなくてはなりません。

 また、案を作成したら、関係者(組織の上司や地域人材、学校現場、クラブチームの関係者等)への意見聴取もしなければならないでしょうし、その案に関係者が全員賛成するとは限りません。反対意見が出た場合、案を再考しなければならず、再考した後、再度関係者に説明する必要があります。

 そしてようやく案が固まったと思ったら、必要な予算要求をしなければならず、これも先例がないため大変苦労をすることと思います。

 このように、ゼロから制度を構築するのはとても難しく、こういったことができる人材はそう多くないと思います。全国に1,700人もいる訳がありません。たとえが極端ですが、徳川家康や大久保利通のような人材はそれほどいないのです。

 皆さんの地域では、どういった方が部活動の地域移行を担当されているでしょうか。教員OBや教員が担当されているなら、地域移行は順調に進んでいないでしょう。酷な言い方ですが、このような制度構築能力を持ち合わせている教員はおそらくいないからです。こういったことを進めることができるのは、行政職の人材です。教員OBや教員にできるのは、学校現場の実情を説明することくらいだと思います。

部活動を地域移行する方法

 最後に、部活動を中学校から手放す個人的な意見を書きます。

 極端な意見ですが、「◯年後に部活動を廃止する」と宣言することです。この「◯年後」は、制度構築や地域への周知等も含め、個人的には最低5年は必要だと思います。

 この場合、最もショックを受けるのは子どもや保護者だと思いますが、改革にはある程度の痛みが必要なのです。痛みのない改革は存在しません

 この5年の間に、各家庭や子ども自身は自分とスポーツや文化活動との関わりをしっかり考え、本気で取り組みたいなら専門の指導者がいるクラブ等に加入し、レクレーション程度にしたいなら、学校等で放課後の時間に週3回、1時間程度、地域人材の見守りのもとでスポーツ等に親しむと良いと思います。

 過疎地域に住む家庭にとっては、クラブ等に加入する場合、大きな負担になるかもしれませんが、子どもが本気でしたいと思っていることに対しては、学校ではなく、保護者が何らかの手段を講じなければならないと思います。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 部活動の地域移行が進まない理由は、参考となるモデルケースが少ないこと、②制度を構築できる人材はそう多くないことでした。

 「地域展開」という名称にして、中途半端な地域移行にしてしまうのではなく、熊本市のように何らかの手段を講じることが賢明かと思いますが、それもなかなか難しいことでしょう。

 各市町村は、制度を構築する能力を持ち合わせている有能な人材を担当にあててほしいと思っています。

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