給特法の改正のポイント

教育政策

 令和7年(2025年)6月11日に「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」)等の改正案が参議院本会議にて可決し、ついに教職調整額が増額されることが正式に決まりました

 本ブログではこれまでも、教職調整額増額に至るまでの経緯を追ってきましたが、法成立を受け、改めて、今後の教員の処遇改善について整理したいと思います。

 本記事を読めば、今後、教員の処遇がどのように改善されるのかがわかると思います。

 結論を先に言えば、令和8年(2026年)1月から教職調整額が毎年1%ずつ上がり、最大10%まで引き上げられ、また、令和8年度(2026年度)から「主務教諭」という新しい職が追加されます

 以下、詳しく見ていきます。

給特法等の改正で変わること

 今期の国会には給特法を含め、複数の法案が提出されましたが、法案成立を受け、主に以下のような変更が生じることになりました。

①教職調整額の増額

②担任手当の支給※自治体の条例制定後

③「主務教諭」の設置

 この他、大きな変更としては、都道府県教育委員会等による「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定・公表等もありますが、学校現場の先生方にとってはあまり関係ないものであるため、割愛します。

 これについては、以下の記事でも触れていますので、興味のある方はご覧ください。

処遇の改善について

 では、現場の教員が最も関心が高い処遇の改善について詳しく見ていきます。

 まず、教職調整額については、以下のように増額されることになります。

令和8年(2026年)1月〜 → 5%

令和9年(2027年)1月〜 → 6%

令和10年(2028年)1月〜 → 7%

令和11年(2029年)1月〜 → 8%

令和12年(2030年)1月〜 → 9%

令和13年(2031年)1月〜 → 10%

 今度の1月から5%に上がり、その後、1年ごとに1%ずつ上がっていき、最大10%まで上がります。「年度」ではなく、「年」なのが気になりますが、少しずつ手取りが増えていくのは嬉しいですよね。

 ただ、「定額働かせ放題」は変わっていないとの批判も各所からありますが、個人的には約半世紀もの間、変わらなかったことが変わったということはとても大きな変化だと思います。

 ここに至るまで学校現場の実情について声を上げていただいた方々、また、そういった声を受け、今般の法改正を実現させた文科省の関係者の方々に感謝します。

 次に「担任手当」の支給についてですが、今回の法改正では「担任手当」とは明記されておらず、以下のような説明があります。

義務教育等教員特別手当を校務類型に応じて支給することとし、その困難性等を考慮して条例で支給額を定めることとする(学級担任への加算を想定)

 つまり、「担任手当」がつくかどうかは、各都道府県等の条例制定が必要とのことです。ただ、「施行期日」が教職調整額の増額と同様の令和8年1月1日となっていますので、各都道府県等は今後、条例の改正を行わなければならないということでしょうか。ちなみに、令和7年度の文科省の予算資料によると、担任手当の額は月3,000円となっています

「主務教諭」という職について

 次に、令和8年度(2026年度)から設置される「主務教諭」という新たな職についてです。新しい職が追加されるのは、主幹教諭及び指導教諭以来ですね。

 「主務教諭」の位置づけとしては、教諭と主幹教諭の間にあたり、中堅教員が担うことになるのかと思います。今回改正された学校教育法第37条は以下のようになっています。

 主務教諭は、児童の教育をつかさどり、及び命を受けて当該小学校の教育活動に関し教諭その他の職員間における総合的な調整を行う。※中学校にも準用

 非常に漠然としていますが、中教審の特別部会の資料には、「学校横断的な取組について学校内外と総合的に調整」、「若手教師へのサポート強化」とあります。「学校横断的な取組」の例として、教育相談、特別支援教育、情報教育、防災・安全教育などを挙げています。個人的には、「主務教諭」はかなりハードな気がしますが、いかがでしょうか…

 なお、「主務教諭」は「教諭」よりも給料が高くなるようです。

 以下、文科省のイメージです(「新たな職」が「主務教諭」にあたります)。

(出典:文部科学省HP)

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 今般の給特法等の改正案成立を受け、教職調整額が増額されることになり、「主務教諭」という新たな職が追加されます

 なお、文科省のトップページにはあべ文科大臣のメッセージも掲載されており、この中に以下の文言があります。

(働き方改革等の)取組を進めるにあたり、各教育委員会や学校が、最も重要な主体であることは言うまでもありません。関係者の皆様におかれましては、今回の法改正も契機として、より一層の改善に向けた取組をお願い申し上げます。

 本ブログで度々述べてきたように、働き方改革のキーパーソンは学校長や市町村教育委員会です。特に学校長が大きなカギを握ります。

 全国の学校長の皆様、学校のマネージャーという意識をもち、学校の日々の業務や行事後の職員の満足度や疲弊度等を観察しながら、業務改善に取り組んでいただきたいと思います。また、教員の皆さんも日々の業務や行事の見直しを常に考え、負担を減らしていきましょう。 

 給特法等について、より詳しく見てみたい方は、以下のページをご覧ください。

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