財務省は教職調整額をどうしようとしているのか?

教育政策

 ここ数回、財務省の資料からいくつかの記事を書いていますが、今回が最終回です。

 今回は、これまでに書いた、文科省の教職調整額13%への引き上げ要求、それに反対する財務省の理由、教員の業務に関する財務省の指摘を踏まえたうえで、教員の給与に関する財務省の案について書きたいと思います。

 このことについては、すでに多くのメディアで報じられていますが、財務省の資料をもとに詳しく書きます。

 本記事を読めば、教員の給与(教職調整額)を財務省がどうしようとしているかがわかると思います。

 結論を先に言えば、①一定期間後に教職調整額を廃止、②一定期間は教職調整額を段階的に引き上げる、③ただし、働き方改革の進捗を確認する、ということです。

 以下、詳しく見ていきます。

案①一定期間後に教職調整額を廃止

 まず、以下のように提案しています。

 本来、業務を所定内の勤務時間(週38時間45分)に収めていくことを目指すべきであるが、現在の教員の勤務実態及び、「働き方改革」・「メリハリ」・「効果」といった観点からは、一定の「集中改革期間(例えば5年間)」に「学校業務の抜本的な縮減」を進める仕組みを講じ、その上で、労働基準法の原則通り、やむを得ない所定外の勤務時間にはそれに見合う手当を支給することが、教職の魅力向上につながるのではないか

 簡単に言えば、「業務量をとことん減らし、その後は現行の時間外勤務手当を支給する制度に移行することが教職の魅力向上につながるのでは」と言っています。

 これは本当にそのとおりとしか言いようがありません。若い世代が昨今、教職を敬遠する理由は「給料の低さ」よりも「業務量の多さ(理不尽さ)」なのです。

 詳しくは書きませんが、資料の中にも「大学生の就職観」というデータがあり、大学生が就職する際、重視する点として「収入」より「楽しさ」や「私生活との両立」が上回っています。

 また、現役の教員も「給料は今のままで良い」と思っている教員がほとんどです。そもそも、学校にはマネーリテラシーがない教員が多く、自分がいくら稼いでいるかということにあまり興味がない人がほとんどだと思います。

案②一定期間は教職調整額を段階的に引き上げる

 次に以下のように提案しています。

 他の公的部門の状況も踏まえた持続的な賃上げを後押しする観点も踏まえ、「集中改革期間」において、財源の確保を前提に、経過措置的に教職調整額を引き上げる場合には、10%を目指して段階的に引上げつつ、10%に達する際に所定外の勤務時間に見合う手当に移行することを検討することが考えられる。(移行による影響に留意する観点から、業務負担に応じたメリハリのある新たな調整手当の枠組みも併せて検討。)

 民間含め、他の公的部門も賃上げがされていく見込みであるため、「「集中改革期間」においては教職調整額を段階的に引き上げていく」としています。ただし、「財源の確保」が前提であるとしています。

 以前も書きましたが、財務省は文科省に対して、教職調整額を引き上げるならその財源も示せと言っています。財務省自ら財源を探す気はないようです(そういうものかもしれませんが)。

 また、文科省が要求する13%という数字はないものの、段階的に10%には引き上げるとしているのは、自民党に対する配慮かと思われます。

 財政負担を考えると、小学校の学級規模が段階的に引き下げられたように、徐々に引き上げていくのが良いという考えなのでしょう。

案③働き方改革の進捗を確認する

 最後に以下のように提案しています。

 ただ引き上げるのではなく、働き方改革の進捗を確認した上で引上げの決定を行う仕組みを付与し、働き方改革に取り組む強力なインセンティブ付けとしてはどうか。働き方改革が進捗せず引上げが行われないこととなった場合は、その時点で原因を検証し、外部人材の配置等その他のより有効な手段に財源を振り向けることとする。

 つまり、「教職調整額は引き上げる条件は、在校等時間を減らすこと」と言っています。そして、在校等時間を減らすための取組として、具体的に以下の提案をしています。

いわゆる「3分類」の厳格化及び外部対応・事務作業・福祉的な対応・部活動等について更なる縮減・首長部局や地域への移行による授業以外の時間の抜本的縮減

勤務時間管理の徹底

校務DXの加速化による業務の縮減

長期休暇を取得できるような環境整備

 これらのことを実現していくためには、とにかく、今やっていることを思い切って「しない」という選択をしないとできないと思います。

 その判断は教員個人では難しいため、やはり何度も書いているように、市町村教育委員会事務局と学校長の手腕がカギを握ることになります。教員の仕事を個人の裁量に任せるという考え方そのものを改めることが必要になります。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 教員の給与(教職調整額)に関して財務省は、①一定期間後に教職調整額を廃止、②一定期間は教職調整額を段階的に引き上げる、③ただし、働き方改革の進捗を確認する、することを提案しています。

 財務省が提案すると実現する可能性が高いらしく、文科省は強い反対の姿勢を表明しています。これについては次回書きます。

 なお、財務省の資料のリンク先は以下のとおりです(資料2の文教・科学技術です)。興味がある方は覗いてみてください。

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