今後の公立学校教員の給与をめぐり、本ブログではこれまでに、文科省の教職調整額引き上げ要求、それに対する財務省の提案等を書いてきましたが、今回は財務省の提案に対する文科省の反論について書きたいと思います。
文科省の反論は現在(令和6年12月時点)、文科省のトップページに掲載されており、文科省の資料にしては珍しくフォントも大きく(要所要所で大きさも変えています)、また、明朝体で書かれています。一見、強い怒りを感じる印象をもちますが、実際そうなのかもしれません。
今回は、この文科省の反論について書きたいと思います。本記事を読めば、財務省の提案に対して文科省が言いたいことがわかると思います。
結論を先に言えば、①教員の時間外勤務は縮減している、②教職員定数等の充実などの財政措置が不可欠です。
以下、詳しく見ていきます。
反論①時間外在校等時間は縮減している
財務省の資料によると、「児童生徒あたりの「教員数」は増加したが、「時間外在校等時間」は減少していない」としています。
具体的な数字を出すと、平成18年度の児童生徒40人あたりの教員数は2.5人であるのに対し、令和4年度は2.9人になっています。また、月あたりの時間外在校等時間は平成18年度は小学校が29時間、中学校が39時間であるのに対し、令和4年度は小学校が37時間、中学校が42時間であり、時間外在校等時間は増えているとしています。
これに対し、文科省は平成28年度と令和4年度のデータを比較し、平成28年度は小学校が59時間、中学校が81時間であるのに対し、令和4年度は小学校が41時間、中学校が58時間であり、時間外在校等時間は減っているとしています。
また、文科省は平成18年度に比べ、いじめの認知件数は約6.4倍、不登校児童生徒数は約2.7倍などのデータも並べ、学校が抱える教育課題は増加・困難化しているにも関わらず、教職員定数の改善や働き方改革の推進により在校等時間は減少したと主張しています。
ただ、令和4年度という年度は、コロナ禍の時期です。個人的には今年度(令和6年度)から、完全に
学校の業務等が完全にコロナ禍前に戻ったなという感覚がありますので、令和6年度にはまた増えているような気がします。
さて、ここでお気づきでしょうか。財務省は平成18年度と令和4年度を比較しており、文科省は平成28年度と令和4年度を比較しています。財務省の資料の中にも平成28年度の数字はあるのですが、目立たないよう、小さく書いてあります。このあたりは意図的なものを感じます。
さらに、令和4年度の数字も財務省と文科省で異なります。出典については、財務省は「文科省資料に基づき算出」としており、文科省は「教員勤務実態調査」としていますので、異なる資料を見ている可能性があります。
いずれにしろ、違う年度を比較しても意味がありません。平成18年度と比べれば令和4年度は増えており、平成28年度と比べれば令和4年度は減っています。双方の言い分はある意味正しいものですが、比較しているデータが異なるため、どちらの言い分も正解であり、不正解ということになります。
反論②教職員定数等の充実などの財政措置が不可欠
財務省は、「平成元年度以降、児童生徒数は約40%減少しているが、教職員定数は児童生徒数ほどには減少していない。したがって、児童生徒当たりの教職員定数は増えていないわけではない」としたうえで、「令和5年度における教職員定数は平成元年度の児童生徒当たりと同じだった場合の定数と比べて23万人増の1.5倍」としています。
また、「教員1人当たりの児童生徒数は児童生徒数の減少に伴い、この20年で大幅に改善し、主要先進国の中で最少クラス」としています。
確かに、イギリスやフランスと比べて、教員1人あたりの児童生徒数は少ないものの、児童生徒が少ない過疎地域にも教員が配置されているため、このような数字になると思います。都市部では相変わらずの40人学級(中学校)であり、特別支援学級の生徒も含めると45人前後の学級もあると思います。このようなデータを示すあたり、財務省は教職員定数を見直すつもりはないように思います。以前の記事でも書いたように、やりがいの低い業務を縮減しろということでしょうか。
一方、文科省は「教育を行うのは「人」であり、教職員定数等の充実のための財政措置が不可欠」としています。
確かにそのとおりであり、教職員定数を増やしてほしいのですが、仮に定数を増やしたところで、現在の状況では「予算があっても人がいない状況」が続く、または更に拡大するだけだと思います。現在の定数でも、定数分の教員等がしっかり配置されていない学校も多いのではないでしょうか。
そのため、増やすべきは「教員」ではなく、教員免許をもたない教員以外の人材であると個人的には思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
文科省の反論の全てに触れようと思いましたが長くなりましたので、続きは次回以降に書きます。今回の分の文科省の反論は、①教員の時間外勤務は縮減している、②教職員定数等の充実などの財政措置が不可欠でした。
個人的には、以前も書いたように、40人(35人)の児童生徒を1人の教員が見るという学校の制度はもはや限界を迎えていると思います。
40人(35人)という数字は、全員が病気や怪我等以外で学校を休むことなく、また、あまりトラブルを起こさない児童生徒という前提の上に成り立つと思います。
現在のように、不登校生が学級に5人程度いる状態であり(学校や地域により差があると思いますが)、学校に登校しても支援が必要な児童生徒がいたり、学校の対応にクレームを言う保護者がいたりするのであれば、1人ではとても無理です。
ですので僕は、この状況を解決するには、「就学義務制度の見直し」という大胆な策を講じるしかないと思いますが、これについてはいずれ書きたいと思います。
なお、文科省の反論資料は以下のページです。
財務省の資料は以下のページです(資料2の文教・科学技術です)。