学校や教員が本来担う業務とは?

業務内容

 前回の記事から本格的に、9月30日付けで文科省から発出された通知文「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申)」(令和6年8月 27 日中央教育審議会)を踏まえた取組の徹底等について」の解説に入っていますが、今回は、「1.学校における働き方改革の更なる加速化」のうちの「(1)学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進」の以下の4つについて書きたいと思います。

①「3分類」に基づく 14 の取組の徹底等

②学校プールの管理

③教育課程の見直し、学校行事の精選・重点化

④校務DXの加速

 本記事を読めば、学校の働き方改革の進め方がわかると思います。

 結論を先に言えば、学校や教員が本来することを明確にすること、学校行事等はその目的を再確認し、実施方法など見直すことなどです。

 以下、詳しく見ていきます。

「3分類」に基づく14の取組の徹底等

 まず、以下のように述べられています。

学校教育の質の向上のために、教師が教師でなければできないことに集中できるよう、学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進が重要である。

 これは本当にそのとおりで、現代の学校は教師でなくてもできる業務、換言すれば、教員免許がなくてもできる業務が多すぎます。これが教員の勤務時間を長くしている最も大きな理由です。自分自身も仕事しながら、「これ誰かやってくれないかな」と思いながらすることがしばしばありますし、実際、可能な限り、頼みやすい支援スタッフに頼むことがあります。

 教師の本来業務、それは授業です。良い授業をするために教員は日々研究しなければなりませんし、そのために学級内の支持的風土を作らないといけません。

 そこで、校内研修が重要になってくるのですが、不登校生(教室に入れない生徒)の対応や保護者対応、部活動指導、学校行事の準備等に追われ、授業準備が最も優先されないという状態になっていることが多いのではないでしょうか。これは何とかしなければなりません。

 そこで、続けて以下のように書かれています。

このような観点から、答申別紙「3分類に基づく 14 の取組の実効性を確保するための各主体による「対応策の例」」をもとに、引き続き、「学校・教師が担う業務に係る3分類」(以下「3分類」という。)に基づく 14 の取組の徹底を図ること

 赤字は下線付きの部分です。「3分類」は平成31年に文科省から出されたもので、多くの方がご存知だと思いますが、一応、リンク先を貼っておきます。

 今回、この「3分類」を進めていくために、各都道府県や市町村、学校等の取組をまとめたものが「対応策の例」になります。例えば、「登下校に関する対応」をどのように学校の業務から切り離したかについて知りたい方は事例が掲載されていますので、興味のある方はこのリンク先を参考にしてください(もちろん、全ての事例が載っています)。

 なお、この「対応策の例」は正直あまり共通理解されているとは言えません。文科省は、今回の答申にも関連資料としてつけていますが、もっと周知を図った方が良いのではないかと思います。

 また、この後、都道府県教育委員会等に対して、学校に対しての調査を精選すること、部活動の状況を把握し、休養日や活動時間を遵守させることを求めています。

学校プールの管理

 次に、学校プールの管理について書いています。

 数年前、プールの水を出しっぱなしにしたことで、校長や当該教員等が水道料金を賠償する事例があったことから、学校プールの管理は、「3分類」中の「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」としたうえで、教育委員会に対して、「指定管理者制度の活用や民間事業者への業務委託等の取組について検討すること」を求めています。

 これも全くそのとおりですが、個人的にはそもそも、学校から水泳の授業自体なくしても良いと思っています。プールの維持管理費が高額であることから、水泳を民間委託する自治体も増えていると聞きますし、安全管理の面でも学校には負担が大きいです。

 水泳の授業は、体育館や運動場で行う授業より、命の危険がある授業であり、昨今の教師不足により、十分な見守りができない状況が生まれる可能性もあります。そのため、学校プールの在り方については教育委員会でしっかり議論していただきたいと思っています。

教育課程の見直し、学校行事の精選・重点化

 次に、教育課程の見直し、学校行事の精選・重点化についてです。以下のように書いています。

標準授業時数を大幅に上回って(年間 1,086 単位時間以上)いる教育課程を編成している学校は、まずは、自ら見直すことを前提に点検を行い、指導体制や教育課程の編成の工夫・改善等により、指導体制に見合った計画とすること。

 また、以下のようにも書かれています。

標準授業時数(年間 1,015 単位時間)を確保するために、必ずしも週当たり 29 単位時間の授業を実施する必要はないこと。

 この記述は驚かれる方が多いかもしれません。おそらく、ほとんどの中学校で週当たり29コマの授業をしていませんか? 国がしなくて良いと言っているのです。見直しを図ることが大切です。

 なお、授業時数を削減し、ゆとりの時間を生み出した事例については、以下の記事をご覧ください。茨城県守谷市の事例をもとに詳しく書いています。

 

 また、学校行事については以下のように書いています。

学校は、それぞれの学校行事の教育的価値を検討し、教育上真に必要とされるものに精選することや、より充実した学校行事にするため行事間の関連や統合を図ることなど、学校行事の精選・重点化を図ること。

 これはほとんどの学校でできていないのではないかと思います。「毎年やっている行事だから、今年も同じようにやる」という感覚でやっていませんか? その行事が負担に感じるものであったり、職員の間で目的を共有できていないのであれば、見直していくべきです。

校務DXの加速

 最後に校務DXについてです。以下のように書いています。

教育委員会及び学校は、学校現場に既に普及した標準的な GIGA 環境(児童生徒1人1台端末、教師1人1台端末、クラウドツール)を徹底的に活用し、教師や校内・校外の学校関係者、教育委員会職員の負担軽減やコミュニケーションの迅速化・活性化に速やかに取り組むこと。

 ここ数年、全国のほとんどの学校で環境整備は進み、GIGA環境を活用している学校も多いでしょうが、正直、個人間・学校間・地域間格差がかなり大きくなっていると思います。なぜなら、ICT等の活用は個人の興味関心や得意・不得意が色濃く反映されるからです。特に、年配の教員ほど抵抗感が強いのではないかと思います。

 また、以下のようにも書かれています。

教育委員会又は学校において端末や機能の利用を硬直的に制限している場合には、このことが校務 DX の阻害要因になり得ることから、当該制限の必要性について改めて見直しを図ること

 生徒指導上等の理由により、機能を制限している自治体及び学校は結構多いのではないかと思います。本当にその制限が必要なのかということを様々な角度から見直すことも必要です。

 さらに、このような記述もあります。

クラウド環境を活用した校務 DX を大きく阻害していると考えられる FAX・押印の制度・慣行の見直しを速やかに行うこと

 これはあまり進んでいないと思います。メール等でやり取りした方が便利であるにも関わらず、未だに学校現場でFAXは多用されています(僕の自治体だけかもしれませんが💦)。

 メールの利活用を進めるためには、学校代表等のメールアドレスを一覧で確認できるようなシステム等を構築する必要があるのですが、これはそれなりの予算も必要であることからなかなか進まない気がします。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 学校の働き方改革を進めるには、学校や教員が本来することを明確にすること、学校行事等はその目的を再確認し、実施方法など見直すことが大事になってきます。

 このようなことをするにも労力が必要であり、一人ではできない部分もありますが、負担及び負担感を軽減するために取り組むことというのは、やりがいを感じると思います。この「やりがい」が大事だと思いますので、できることから少しずつ進めていきましょう!

 以下、通知文のリンク先です。本記事に関連する部分は3〜5ページです。

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