13%の教職調整額を財務省が反対する理由

教育政策

 以前の記事で、教職調整額を13%に引き上げることを文科省が要求していると書きましたが、これに対して財務省は明確に反対の意志を示し、対案を出しています

 他省庁からの予算要求に対して財務省が対案を示すのは異例であるらしく、要求されている数字は承認できないものの、政策自体には強く反対できない状況が推測できます。

 今後の議論の動向も注目されますが、今回は、財務省が13%の教職調整額に反対している理由を書きたいと思います。

 記事を読めば、教職調整額増額に対する財務省の見解がわかると思います。

 結論を先に言えば、①中教審答申との整合性がない、②教員の在校時間に差がある、③魅力向上につながらない、この3つです。

 以下、詳しく見ていきます。

理由①業務の縮減策と連動していない

 まず、以下のように指摘しています。

13%の教職調整額は、月26時間(=年312時間)の時間外在校等時間に相当し、労働基準法の上限である年360時間に迫るものである。

 今年(令和6年)8月になされた中教審答申には、「教師の平均の時間外在校等時間を月20時間程度に縮減」という文言があり、これとの整合性に欠けるとの指摘をしています。

 細かいところを突いてくるなと思いますが、確かに数字の整合性はないと言えばないですね。文科省が13%という数字を出した根拠を明らかにする必要があると思いますが、これに関する資料は管見の限り、見当たりません。

 なお、財務省は働き方改革を進めること(時間外在校等時間を縮減すること)を条件に教職調整額を段階的に引き上げていくことを提案していますが、これについては長くなりますので、また別の機会に書きたいと思います。

理由②教員の在校時間に差がある

 次に、以下のように指摘しています。

時間外在校等時間にかかわらず一律(定率)に支給されてしまう。そのため、時間外在校等時間が0時間でも、月26時間分が支給されることになる。

 これは真っ当な反論ですよね。これまでも本ブログで書いてきたように、僕個人としても一律に13%の教職調整額支給はもったいなすぎると思います。

 教員の時間外勤務が多いとは言え、定時退勤する教員も一定数いるのも事実です。そうした教員に13%の調整額は税金のムダであると言わざるを得ません。

 また、「教師人材確保という観点からは、(教職調整額が定率支給のため、)比較的給与が低い若手教員よりも、給与が高い中堅・ベテラン教員の方が増額となる点も課題」とも指摘しています。

 一般的に、「教師人材確保」という言葉は若い世代を対象にしています。教職調整額を増額したところで、教職調整額は基本給に対して上乗せされる仕組みですので、その恩恵を大きく受けるのは若い世代ではなく、基本給が高い中堅・ベテランだと言っているのです。

理由③教職の魅力向上につながらない

 最後に、以下の指摘をしています。

①②の問題を抱えるため、必ずしも教職の魅力向上につながらず、効果に乏しい。

 つまり、教職調整額を増額したところで、業務量自体は減らず、また、若い世代は基本給が低いため、教職の魅力向上につながらないということです。

 確かに、若い世代が昨今、教職という仕事を敬遠する理由は「給与が少ない」というよりも「業務量の多さ」だという声もあります。そのような声も反映しつつ、財務省は見解を示していると言えます。

 さらに財務省は、「教職調整額を13%にした場合の年間5,600億円程度の安定財源も示されていない」とし、予算増を要求するなら安定財源を示せと言っています。それは文科省だけで考えるのは難しい気がしますが、少なくとも現在ある予算のうち、何かを削減するという案を出すと本気度が伝わるのかもしれません。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 財務省が教職調整額13%に反対する理由は、①中教審答申との整合性がない、②教員の在校時間に差がある、③魅力向上につながらない、この3つです。

 そもそも、教職調整額の増額は自民党が言い出したことですので、財務省としても、簡単に反対は言えない事情もあると思いますが、13%は多すぎるということで反対の理由と対案を出してきていると思います。

 一方、文科省としても本当は10%でも良いと思っているのかもしれませんが、あえて高い数字を示すことで教職調整額の増額という要求を通そうと思っているのかもしれません。

 文科省は、今回紹介した財務省の意見に対する反論も出していますので、これについても別の機会に紹介します。これほどまでに文科省と財務省がバトルをするのは珍しいのではないかと思います。

 なお、今回引用した財務省の見解の元資料は以下のリンク先です。興味のある方はご覧ください(資料2の文教・科学技術です)。

 また、教員の給与に関する財務省の見解については、本ブログの過去の記事も参考にしていただくと幸いです。

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