以前の記事で、学習指導要領のデジタル化の方向性について書きましたが、先日(令和7年11月12日)、デジタル化される学習指導要領のイメージ資料が発表されましたので、今回はこれについて書きたいと思います。
本記事を読めば、デジタル化される学習指導要領のイメージがわかると思います。
結論を先に言えば、検索機能を設けたウェブサイトベースを提供し、教科書の指導書等から該当する学習指導要領・解説等の記載をリンク等により一体的・即時的に確認できるようになったり、教科内、教科間、校種間の系統性・関連性を掴みやすくなったりする方向性です。
以下、詳しく見ていきます。
学習指導要領の利便性に関する現場の声
まず、現行の紙の学習指導要領に関する現場の紹介します。全国の先生方も同じような悩みや不満をお持ちではないかと思います。
①必要な情報が探しにくい
活字しか並んでいない現行学習指導要領は、見るだけでもハードルが高く、また、自分が欲しい情報にアクセスするのに時間がかかります。そこで、「検索機能を設けてわかりやすく表示してほしい」という声や、「担当学年だけ表示させるようにしてほしい」との声が上がっているようです。
②データが活用しにくい
現行学習指導要領は、PDF版も公開されていますが、PDF版では「コピー&ペーストがしにくい」などの声も上がっており、利便性は高くありません。また、「進度管理などの必要な情報を付加できるようにしてほしい」などの声も上がっており、単なる文字のデータだけでなく、付加機能を求める声も上がっているようです。
③対応関係や関連性がわかりにくい
これは、教科書や教科間・学年間・校種間の関連性を指しています。例えば、中学校社会科で言えば、地理的分野の授業経験しかない場合、公民的分野でどのような内容を指導しているかわからず、もし、わかっていれば、公民的分野の学習内容を踏まえて指導できます。また、中学校の教師が小学校でどのような学習をしているか教師がわかっていれば、それを踏まえた指導ができます。もちろん、現行でも他分野や小学校の学習内容は知ることができますが、短時間で知ることができれば便利ですよね。
学習指導要領の改善の方向性
以上のような現場の声を踏まえ、学習指導要領の利便性を高めるべく、以下の方向性を検討しています。
①デジタル技術を活用した学習指導要領の利便性の抜本的改善
検索機能を設けたウェブサイトベースを提供することにより、教科書の指導書等から該当する学習指導要領・解説等の記載をリンク等により一体的・即時的に確認できるようにしたり、教科内、教科間、校種間の系統性・関連性を掴みやすくしたりするとのことです。
②資質・能力ベースの授業づくりの更なる促進
現行学習指導要領では、限られた授業準備の時間の中で育成したい資質・能力を確認することの負担が大きく、教科書「を」教える「本時主義」になりやすいという課題もあるとのことです。これをデータで一体的に確認することができると、単元や題材の構想を含めた授業づくりがしやすくなるという考えです。
③社会に開かれた教育課程の更なる推進
利便性を高めた学習指導要領をネット上で公開することにより、教師や保護者等を介して子供自身も身に付けるべき力を自覚するきっかけになり得るとともに、保護者や地域住民・民間事業者等と連携した取組を進めやすくなるという考えです。
デジタル学習指導要領のイメージ
以上を踏まえて、現段階でのデジタル学習指導要領のイメージを掲載しています。あくまで「現段階」ということになっていますので、今後さらにブラッシュアップされていくことと思います。
まず、学習指導要領本体と該当する解説を一体的に確認できる画面です(小学校3年の理科)。

(出典:文部科学省HP)
「目標」や「見方・考え方」、「内容」が一体的に表示され、確認しやすくなっています。また、「詳細」を押すと、内容の取扱いや内容のまとまりごとの評価基準(例)が表示されるようです。
次に、育成を目指す資質能力の連続性や各教科の系統性も確認できるようになるとのことです。以下は小学校6年と中学校1年の理科です。

(出典:文部科学省HP)
左側に小学校6年、右側に中学校1年の目標等が表示され、比較しやすくなっています。小学校のみの勤務経験しかない方、またその逆の方にとってはこのような機能は大変ありがたいですよね。
最後に、教科をまたいだ検索の画面例を紹介します。

(出典:文部科学省HP)
小学校3年の算数と理科が並べて表示されています。小学校でも教科担任制が拡大されつつありますので、このような機能は大変便利ではないかと思います。
この他、キーワードでの検索、系統表の検索などの機能も紹介されていますので、より詳しく知りたい方は本記事末尾のリンク先の掲載資料をご覧ください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
デジタル化される学習指導要領は、検索機能を設けたウェブサイトベースを提供し、教科書の指導書等から該当する学習指導要領・解説等の記載をリンク等により一体的・即時的に確認できるようになったり、教科内、教科間、校種間の系統性・関連性を掴みやすくなったりする方向性です。
より詳しく見てみたい方は以下のページをご覧ください(資料1を参考にしています)。


