昨年(令和6年)末、次期学習指導要領の策定に向け、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」が中教審に対して諮問されました。
そこで今回は、次期学習指導要領策定に向けたスケジュールや諮問の概要について書きたいと思います。
本記事を読めば、次期学習指導要領の改訂に向けたスケジュールや大まかな内容がわかると思います。
結論を先に言えば、次期学習指導要領は令和12年度(2030年度)から小学校で全面実施される見込みで、内容については現在の方向性とそれほど大きく変わることはないと思います。
以下、詳しく見ていきます。
改訂に向けたスケジュールは?
まずは今後のスケジュールの見込みですが、文科省は今般の諮問に対しての答申を令和8年度(2026年度)中に受ける予定であり、令和12年度(2030年度)以降、小学校から順次、新しい学習指導要領の実施に移していきたいようです。
現行学習指導要領が令和2年度(2020年度)から小学校で全面実施されていますので、これまでどおり、10年間隔での実施というスケジュールです。
そして、これまでどおりのスケジュールでいくと、中学校の全面実施は令和13年度(2031年度)、高校は令和14年度(2032年度)から年次進行で実施されていくものと思われます。
諮問の概要と今後の方向性
次に、今回の諮問の概要ですが、文科省は「子供たちを取り巻く社会の状況」や「学校現場の状況」を分析したうえで「顕在化している課題」を挙げ、「子供たちが社会で活躍する2040年代を展望するとき、初等中等教育が果たすべき役割はこれまで以上に大きい」としています。
また、一方で「教師の努力と熱意に対して過度な依存はできず、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合う必要性」もあるとしていますので、これまで以上に小・中・高の教育は大事だけど、教員に過度な業務を求めたらダメですよということを言っています。
そこで、中教審への審議事項として以下の4つの項目をあげています。
①質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方
②多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方
③各教科等やその目標・内容の在り方
④教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む、学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策
ちなみに、一番上の項目に「深い学び」の文言もありますが、「顕在化している課題」にも「学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ば」とありますので、現行の学習指導要領の大きな理念である「主体的・対話的で深い学び」は今後も継続させていきたい考えだと思われます。
また、審議事項の小項目にも「重要な理念の関係性の整理(「主体的・対話的で深い学び」、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」、「学習の基盤となる資質・能力」等)」とありますので、「主体的・対話的で深い学び」に加え、現行学習指導要領のキーワードの一つである「資質・能力」、そして、令和3年(2021年)の答申「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」の方向性を続けていくものと思われます。
注目されていることは?
以上のように、内容についてはこれまでの方向性と大きく変わらないと思われますが、ニュース等でも報道されているように、今回の諮問の目玉は「柔軟な教育課程」です。
具体的には、小学校は45分、中学校は50分を基本としている授業時間を5分ずつ短縮する案が浮上しています。これを導入した場合、1日6コマだと30分程度の時間が生み出されますので、この時間を児童生徒の興味・関心や能力・特性に応じた学習時間に充てようとするものです。
これまで本ブログでも述べてきたように、教育課程編成権は学校長にありますので、働き方改革と同様、各学校の教育課程をどうするかは学校長のマネジメント力がカギを握ることになりそうです。
また、年間の授業時数を必要以上に多く設定する学校が一部見られるという現状もあるようで、「参考資料」の中に「1086単位時間以上として教育課程を編成している学校については、見直すことを前提に点検を行い、(以下略)」という文言があります。次期学習指導要領では、年間の授業時数をどう考えるかも肝になってくると思います。
ちなみに、授業時数を削減し、学校にゆとりの時間を生み出した例については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
次期学習指導要領は令和12年度(2030年度)から小学校で全面実施される見込みで、内容については現在の方向性とそれほど大きく変わることはないと思います。
文科省の諮問の詳細は以下のページにありますので、興味がある方はご覧ください。