次期学習指導要領の情報教育の方向性

学習指導

 先日(令和7年5月12日)開かれた中教審の特別部会において、次期学習指導要領における情報教育をどうするのかについて話し合われたようです。

 そこで今回は、この日の会議資料をもとに、次期学習指導要領の情報教育の方向性について書きたいと思います。

 本記事を読めば、次期学習指導要領における情報教育の取り扱いの方向性がわかると思います。

 結論を先に言えば、小中高の系統性を持たせ、それぞれの段階で内容を改善することを検討しています

 以下、詳しく見ていきます。

情報教育の国際的潮流

 まずは、情報教育の国際的潮流について見ていきます。

 近年、科学技術の発展は目覚ましく、特に生成AIが話題に上がりますよね。「人間はAIをどう扱っていくのか」という大きなテーマはいたるところで議論されています。

 AIを含め、発展する科学技術について、どのように学び、どのような力をつけていくかについては国際的な潮流となっているようです。

 OECDの「ラーニングコンパス2030」には以下の文言があります。

2030 年に必要とされる主要な知識、スキル、態度及び価値は読み書き能力やニューメラシー(数学活用能力・数学的リテラシー)に限らず、データ・リテラシー(データ活用・解析能力)やデジタル・リテラシー(デジタル機器・機能活用能力)、心身の健康管理、それから社会情動的スキルも含まれます。

 OECDは、これらを「21世紀で活躍するためには欠かせない基礎能力」としており、人間の知性を支える重要な側面としています。

我が国の情報教育の現状

 では、我が国の情報教育はどうなっているのでしょうか。現状について見ていきます。

 まず、「デジタル競争力」という指標で見ると、我が国は31位となっています。「デジタル競争力」とは、「知識・テクノロジー・将来に向けた環境整備」の3領域から構成されるデータのようです。

 上位の国々は、1位シンガポール、2位スイス、3位デンマーク、4位アメリカ、5位スウェーデンとなっています。ちなみに、韓国は6位、中国は14位となっており、我が国は後塵を拝している状況であると言えます。

 また、学校における「ICTを用いた探究型の頻度の割合」はOECDで最下位となっています。

 情報教育の国際比較を見ても、小学校段階でアメリカやイギリス、韓国や台湾などは情報教育を教科等設け、週1時間程度指導している一方で我が国は、「関連科目の中で触れられている、または一部の学校で扱われている可能性がある」程度に留まっています。

 一方で、コンピュータやプログラミングに対する我が国の子供の興味・関心は高く、「デジタル・リソースについてもっと学ぶことに興味がある」、や「プログラミングを学ぶことに興味がある」という質問に対する肯定的回答の割合はOECDの平均並みとなっています。

我が国の情報教育の課題

 以上の現状を踏まえ、国は「学校教育においても、情報活用能力が系統的に指導されておらず、その育成が十分とは言い難い」としており、以下のような課題があるとしています。

①指導内容が不十分

②小中高通じた育成体系が不明確

③必要となる条件整備

 ①については、現状からもわかるように、他国に比べ、情報教育の取り扱い自体が少なく、内容も不十分であるとしています。また、「学校による取組の差が大きい」ともしています。先進的に取り組んでいる学校もあるということでしょう。

 ②については、小学校→中学校の技術分野→高校の情報科におけるつながりがないとしています。確かにこれらについて、系統的に学習がなされているとは言えません。

 ③については、「技術の進展に伴い、教育内容が妥当性を失うことを防ぎ、教師の負担を可能な限り減らす仕組みを構築する必要」としています。

 個人的には、ここに最も注力してほしいです。これまでも、社会や時代の変化により、「◯◯教育が必要だ」と言われ、学校現場では◯◯教育がどんどん増えています。基本的に、これらを担うのは全て教師であり、教師は◯◯教育が増える度に勉強して教えなければなりません。これが教師の時間外勤務の増加につながっている部分はあります

 情報教育に今後力を入れるのであれば、必要な人的配置を確実に行ってほしいと思います。

今後の方向性

 最後に、今後の方向性についてです。現状と課題を踏まえ、小・中・高の内容と系統性については以下のようなイメージとしています。

(出典:文部科学省HP)

 小学校では一定の時間を確保して情報教育を教え、中学校の技術分野では学ぶ内容を深めたり、広げたりし、高校の情報科では、小中学校での内容改善を踏まえ、内容を深める方向とし、同時にこれらに系統性をもたせることとしています。 

 なお、資料の下部にある、探究的な学びとの連携については、以下の記事をご覧ください。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 次期学習指導要領で情報教育は、小中高の系統性を持たせ、それぞれの段階で内容を改善することを検討しています

 より詳しく見てみたい方は以下のページをご覧ください(資料1-1を参考にしています)。

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