次期学習指導要領の「調整授業時数制度」とは?

学習指導

 前回前々回の記事で、次期学習指導要領策定に向けた論点整理に触れてきましたが、「素案」と「案」を経て、9月25日に確定版が公表されました。

 今後は、各教科等の細かい議論をするとのことですが(9月24日から始まっています)、今回は論点整理の中から「調整授業時数制度」について詳しく書きたいと思います。

 本記事を読めば、次期学習指導要領の目玉の一つである、「調整授業時数制度」について理解できると思います。

 結論を先に言えば、「調整授業時数制度」とは、学校の実情を踏まえ、柔軟に教育課程を編成することです。

 以下、詳しく見ていきます。

現行の教育課程編成の課題

 まず、現行学習指導要領における教育課程編成上の課題を紹介します。以下の3つです。

①特例校制度は時間と手間がかかる

②硬直的な運用が残る

③カリキュラム・マネジメントの制約になっている

 ①については、現行の学習指導要領でも学校の実情に応じた柔軟な教育課程を編成することは可能なのですが、国に対して「特例校」として申請することが必要です。ただ、国に申請するというのはハードルが高く、使いやすい制度とはなっていないとのことです。

 ②については、例えば、授業の1単位時間は現行の学習指導要領でも中学校でも45分とすることや90分とすることも可能ですが、全国の多くの中学校では50分を基本としていることが多いのではないでしょうか。また、年間授業時数も、国が標準とする1,015時間を消化するためには、週28コマで良いのですが、感染症や自然災害等による休校等を見込んで週29コマに設定している学校が多いという現状があります

 ③については、「子供の実態を踏まえた柔軟な指導、学年を横断した教育課程編成などの制約となっている」としています。

 また、以上のような現状に加え、不登校生や特異な才能がある子供等、多様性を包摂するためにも、教育課程を柔軟に編成することは必要としています。これについては、以下の記事を参考にされてください。

今後の方向性について

 以上のような課題を踏まえ、以下のような方向性にしようとしています。

①国への申請は不要

②各教科等の標準授業数を調整

③調整によって生み出された時間の活用

 ①については、「特例校」制度を残しつつも、煩雑な申請等を不要とする方向性です。

 ②については、総授業時数を維持しつつ、各教科の標準授業時数を調整可能とするとのことです。例えば、数学に課題のある学校においては、国語の授業を減らし、数学の授業に充てるということです。

 また、③は別の教科に充てる他、「授業改善に直結する組織的な研究・研修等に充てることも可能とする方向」としています

 これらについては、「教師や子供の学びに余白を生み出し、教育の質の向上に資すること」を目的としつつも、「負担軽減自体が目的ではない」としています。また、受験対策への過度な傾斜等にもなることがないよう、クギを刺しています。

 以上の内容を図式化したものが以下のものです。

(出典:文部科学省HP)

調整可能な教科等と時数について

 では、具体的にどの教科を調整することが可能なのでしょうか。令和8年1月19日に開かれた中教審の部会においてその方向性が示されていますので紹介します。

 まず、減らしてはいけない教科等は以下のとおりとしています。

35コマ以下の教科等は減ずることは不可

 これは、道徳や特別活動、小学校3・4年の外国語活動、中学校2・3年の音楽・美術が該当します。これらについては、「週1コマ程度の時数を確保」する必要があるとしています。

 ちなみに、現行の制度においては総合的な学習の時間も減ずることは不可としていますが、新制度においては、減ずることを可とする方向性です。

 一方、これら以外の教科については、現行制度においては、標準授業時数の1割を減ずること可としていますが、今後は1割以上の方向性で検討されるとのことです。

調整した時数の活用について

 そして、ある教科の時数を減らした場合、以下のような時間を設定することを検討しています。

①既存教科等に上乗せ

 これはシンプルな話で例えば、国語を減らし、英語を増やすという感じです。

②教科の新設

 これはおそらく、新制度の中で最もハードルが高いものと思われます。その要件については、「教科として相応しい児童生徒の資質・能力の育成を担保する相応の措置が図られている必要がある」としています。

③裁量的な時間(学習枠)

 これは、②よりもハードルが低いもので、その要件として「学習指導要領に定める教科等に該当しないものの、児童生徒の資質・能力の育成に特に資する効果的な教育プログラム等」としています。

 具体的な例として、「個に応じた学習過程の充実に資する取組」、「学習の素地を高める取組」、「関係性の質を高め、学習の一層の円滑化に特に資する取組」、「その他地域等の特色を生かした取組」としています。いずれの例も、さらに細かい内容が掲載されていますが、これまで学級活動や総合的な学習の時間で取り組んできたような内容ではないかと思われます。興味のある方は、本記事末尾のリンク先からご覧ください。

④裁量的な時間(研究・研修枠)

 これが最も画期的なことと思うのですが、授業以外の教員研修を授業時数としてカウントできるようになるものです。具体的な例として、「質の高い授業を効果的に実施するための教材研究・授業研究」、「教師の資質・能力の向上を図るための学校・教育委員会が企画する研修」、「児童生徒理解の向上など、学習・指導上の課題解決に資する情報共有・協議」、「学校と地域との連携体制の確保」としています。

 つまり、現在、校内研修や研究として授業外で行っているものを授業として取り扱うことができるとするものです。

 これらを図式化したものが以下のものです。

(出典:文部科学省HP)

 なお、資料の中にもあるように、①と②は時数の上限を設定せず、③と④は上限を設定する方向性です。ベースとなるのは③と④であり、特に③を活用させていきたい考えのような気がします。

この制度で学校現場に求められること

 この制度が導入された場合、学校現場はどう変化するかというと、学校が学校の実情に応じた教育課程を主体的に編成する必要があることです。

 我々は子供に「主体的な学びを」と言いますが、多くの教員が前例や他校の取組を参考に業務にあたっていないでしょうか。もちろん、この新しい制度においても、現行の方法でもすることができますが、子供に主体性を求めるならば、まず、教員が主体的に業務に当たらないといけないと思います。

 授業時間は何分にするか、一年間に何週の授業をするか、週あたり何コマの授業をするか、生み出された時間は何に充てるか…このようなことを考えるのは大変ですが、僕個人としては魅力的に感じます。全国の先生方も、現在の自校の課題を踏まえ、どのような教育課程を編成するか検討に入ることをオススメします。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 次期学習指導要領の「調整授業時数制度」とは、学校の実情を踏まえ、柔軟に教育課程を編成することです。

 より詳しく見てみたい方は、以下のページを参考にされてください。

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