次期学習指導要領で教科書は薄くなる?

学習指導

 先日(令和7年6月16日)、次期学習指導要領策定に関する9回目の中教審の特別部会が開催されました。今回は、これまでの議論を踏まえ、「余白の創出を通じた教育の質の向上」について議論がなされたようです。

 本ブログでも取り上げてきた教育課程や授業時数についても議論がなされたようですが、今回は資料の中から、次期学習指導要領において教科書の内容をどのようにしようとしているのかについて書きたいと思います。

 本記事を読めば、次期学習指導要領における教科書の取り扱いの方向性がわかると思います。

 結論を先に言えば、中核的な概念等の獲得に資する内容に重点化し、内容を精選しようとしています

 以下、詳しく見ていきます。

授業実践と教科書の現状

 我々教員は本来、学習指導要領を読み込みながら毎時の授業を実践しなければなりませんが、現状としては、教科書や教科書会社が発行している教師用指導書を見ながら授業を実践している人がほとんどではないかと思います(これについては、東京学芸大学教職大学院の堀田教授も指摘しています詳しくは以前の記事をご覧ください)。

 今回の資料にありますが、小学校高学年・中学校・高校の教員を対象としたアンケートにおいて、「あなた(教師)は教科の授業において、次のような内容の授業をどれくらい行っていますか」という質問に対し、「授業において「児童生徒の興味関心に合った内容を学習する」や「自分でテーマを決めて学習する」などより「教科書どおりに教える」が多くなっています

 また、教科書のページ数も50年前と比べると、小学校で約3倍、中学校で約1.5倍となっており、これが授業時数の多さと「余白の創出」の妨げの一因になっているとしています。

 ただ、一方で学習指導要領及び「解説」では、取り扱う事実的知識を網羅的に指定はされておらず、例えば、中学校社会科の歴史的分野の鎌倉時代における学習指導要領の記述は以下のようになっています。

次のような知識を身に付けること。
(ア)武家政治の成立とユーラシアの交流
鎌倉幕府の成立,元寇(モンゴル帝国の襲来)などを基に,武士が台頭して主従の結び付きや力を背景とした武家政権が成立し,その支配が広まったこと,元寇がユーラシアの変化の中で起こったことを理解すること。

 それではなぜ、学校現場では「教科書どおりに教える」ことが多くなっているのでしょうか。それは、教材研究にかけることができる時間がなかなか捻出できないという問題もありますが、高校入試や大学入試との関連も否定できないでしょう。

授業改善と高校入試

 現行の学習指導要領から、「主体的・対話的で深い学び」というキーワードが出され、「授業改善」という言葉もよく聞くようになり、授業づくりにおいて単元のまとまりを意識することが求められています。

 確かにそれは大事だなと思うこともしばしばあるのですが、単元の学習課題などを重視する授業をしていると、生徒や保護者から「先生、それって入試に出るんですか?」と聞かれることがあります。生徒や保護者にとって、特に社会科においては知識の量が重要であるという認識があるのです。

 それは概ね全国的な傾向ではないかと思います。そのため、「教科書に書いてあることが入試に出題される」→「教科書どおりに教える」という発想につながっているのだと思います。

 そのような現状を受け、今回の資料では、「高校入試では、事実的知識の記憶を問う問題が引き続き出題されるとともに、思考力・判断力・表現力を問う問題も出ている」とし、問題の事例も掲載しています。以下のようなものです。

(出典ː文部科学省HP)  

 また、「知識に関する設問であっても、単なる記憶を問うのではなく概念としての理解を問う問題も考えられる」とし、以下のような事例を掲載しています。

(出典:文部科学省HP)

 確かに、僕が勤める学校がある県でも、このような問題は一部見られます。このような問題を解くための訓練も定期テスト等でしていきたいと思うのですが、定期テストというのは範囲が限られていますので、このような広範囲にまたがる問題というのは作りにくいという現状があります💦

今後の方向性

 そこで、今後の課題を『「厚い教科書を全て教える」からの脱却』とし、以下のようなイメージとしています。

(出典:文部科学省HP)

 ③の中に、教科書を「中核的な概念等の獲得に資する内容に重点化・内容を精選」とあります。これが意味するのは、教科書の文量を減らし、薄くするということだと思います。ただ、「削減」というと、再び「ゆとり教育」と言われかねないため、「精選」という言葉を使っているのでしょう。

 なお、高校入試については④にも少し記載がありますが、別ページに「本日の議論を踏まえつつ、別途検討」と記載があります。今後も引き続き検討していくものと思われます。

 従来、「授業改善」のみが言われ、入試との関係は議論されてきませんでしたので、ここにメスを入れていただくのは現場としては大歓迎です。やはり、「ゴール」が変わるのはとても大事なことだと思います。

 個人的には「中核的な概念」を問うなら、入試も大学のテストのように持ち込み可にして記述式にする必要があると思います。記述式は採点に時間がかかりますが、AIが解決してくれると思っています。 

 なお、「中核的な概念」については以下の記事をご覧ください。

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 次期学習指導要領においては、教科書を中核的な概念等の獲得に資する内容に重点化し、内容を精選しようとしています

 より詳しく見てみたい方は以下のリンク先をご覧ください(資料1-1を参考にしています)。

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