以前の記事で、次期学習指導要領策定に向けた大まかなスケジュールと方向性について書きましたが、いよいよ審議がスタートしましたので、今回から議論の経過を書いていきたいと思います。
今回は、審議事項の1つ目である「質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方」について書きます。
本記事を読めば、「分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方」の方向性についてわかると思います。
結論を先に言えば、中核的な概念を整理し、目標や内容を構造化することです。
以下、詳しく見ていきます。
学習指導要領の分かりにくさと使いにくさ
我々教員は学習指導要領を基本に授業をしますが、そもそも、学習指導要領を読むこと自体大変だなと思う人が多いのではないかと思います。
なぜなら、学習指導要領は活字しかないうえに、抽象的な表現も多く、また、言い回しなども難解であるため、読むのに時間がかかります。日々、時間に追われている教員にとっては、じっくり読むのは研究授業をする際というのが実態ではないかと思います。
たとえば、現行学習指導要領のキーワードである「資質・能力」や「見方・考え方」もそれが何かを理解するのに、ある程度読み込まないとならず、さらに他の文献も読まないと理解が難しい部分があります(少なくとも僕はそうでした💦)
もちろん、教員としてそこまでしなければならないかもしれませんが、我々としては、「本単元で求められる「資質・能力」はこれ!、「見方・考え方」はこれ!」みたいな表現で書いていてほしいのです。
そこで我々は、よりわかりやすく書いてあり、毎時の授業の流し方なども書いてある、「教師用指導書」(各教科書会社が発行)を参考にするのがほとんどではないかと思います。
方向性①内容の構造化
では、ここから次期学習指導要領の方向性について書いていきます。
現行学習指導要領は、授業改善に一定の成果を出している一方で、次のような課題があるとしています。
「個別の知識を学びながら、新たな知識が既得の知識及び技能と関連付けられ、各教科等で扱う主要な概念を深く理解し、他の学習や生活の場面でも活用できる」ことを目指す授業を創る上で、個別の知識や技能が関連付けられた状態、各教科等の主要な概念の深い理解との関係(「タテ」の関係)がイメージしにくい。
そりゃそうですよ(-_-;) 現場の教員にそこまで読み込んでイメージする時間なんてありませんよ。
そこで、現行学習指導要領を構造化した例を挙げています。小学校国語の「内容全体を資質・能力ごとに整理した例」として、「知識及び技能」の下に「言葉の特徴や使い方」、「話や文章に含まれている情報の扱い方」を並べています(あくまで一部だと思います。字面では分かりにくいので、興味のある方は本記事末尾のリンク先の資料をご覧ください)。
このように構造化し、視覚的に見やすくすることで我々現場の教員にとってはイメージしやすくなります。ぜひ、全ての校種・教科・単元で構造化し、図で示してほしいと思います。
方向性②中核的な概念を整理
次に、下のような課題を挙げています。
多くの子どもたちが、分数や小数の概念的な理解ができていないことがわかる。1/2、1/3、0.5など、日常生活でも頻繁に聞く数に対して、その『意味』が理解できないでいる子どもが多数いる
ちなみに、「1/2と1/3のどちらが大きいか」を答える問題に対して、小学3年生の正答率は17.6%、小学4年生の正答率は22.4%、小学5年生の正答率は49.7%というデータを示しています。
分数の学習を小学校3年生でどれほどしているかわかりませんが、17.6%という数字は低すぎると思いますし、5年生でも半分程度というのは低いと思います。
また、算数の学習の前提なのに、「ひとしい」という言葉の意味がよくわかっていない児童が多いというデータも示しており、以下のような課題を挙げています。
分数の意味の理解にとって『ひとしい』は前提になる重要な概念である。2年生で分数を導入する際に、『ひとしく分ける』ということの意味がわからないとしたらそれは大きな問題で、『ひとしく』が抜け落ちてしまうと、ケーキをいびつに、不均等にしか分けられない『ケーキの切れない子ども』になってしまうのである。」
以上のように、各教科の学習するうえで基本的な「概念」の理解が重要だとし、「各教科等の「中核的な概念や方略」を中心に、学習指導要領の目標・内容の一層の構造化を図る」こと」が今後の方向性としています。
ちなみに、「中核的な概念や方略」については以下の記事を参照にしてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「分かりやすく使いやすい学習指導要領」にするために中核的な概念を整理し、目標や内容を構造化するとのことです。学校現場の理解促進のために、ぜひとも視覚的に見やすい学習指導要領にしてほしいと思います。
文科省の資料は以下のリンク先にあります。今回は主に「資料1-1」から抜粋しています。興味のある方は覗いてみてください。