次期学習指導要領における「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成の方向性

教育政策

 以前の記事で、次期学習指導要領の基本的な考え方を紹介しましたが、次期学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現を通じた「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成を目指しています。

 そこで今回は、「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成にあたり、次期学習指導要領でどのようなことを改善・充実させていくのかを紹介したいと思います。

 本記事を読めば、次期学習指導要領における「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成の方法についてわかると思います。

 結論を先に言えば、「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばすこと」と「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができること」の二つの方向性を両輪で推進していくとしています。

 以下、詳しく見ていきます。

二つの方向性

 文科省は学校教育において、「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」を育成するためには、「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばす」ことと、「当事者意識を持って自分の意見を形成し、対話と合意ができる」ことを両輪で推進していく必要があるとしています。

 「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばす」ことを重視する理由として、以下のように述べています。

 AIなどデジタル技術の発展により、定型的な仕事の代替が進む中、皆と同じことができることにも一定の意義があるが、それ以上に独自の発想や視点に価値創造の源泉がシフトしつつある。また、不登校児童生徒の多くが自分が好きなことや知りたいことを突き詰める学びを学校に求めている。こうした中、「自らの人生を舵取りする力」を育成するためにも、「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」中で、それらを原動力として学び全体への動機を高めていくことの重要性が増している。

 一方、「当事者意識を持って自分の意見を形成し、対話と合意ができる」ことを重視する理由として、以下のように述べています。

 グローバルな人の移動により人口の多様性が増すとともに、SNSやAIの負の側面による社会分断の可能性、経済的格差の拡大等も指摘されている。こうした中、民主的かつ公正な社会の基盤として学校を機能させる必要性が高まっており、多様な他者と出会う場である学校で当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる「民主的で持続可能な社会の創り手」を育成する重要性が増している。

 ともに、学校教育への期待と責任がうかがえる文言になっています。現在の学校の人的資源と体制でこのような教育ができるかは正直自信がありません💦

 そして、二つの方向性の関係性を以下のように述べています。

「好き」を育み、「得意」を伸ばし、その子らしい個性が伸長され、自分なりの意見や観点を持つようになれば、多様な他者と当事者意識を形成し、対話や合意をする必然性が生まれてくる。逆に、対話や合意に特化した学習活動を行おうとしても、普段から自分なりの意見や主張、それらを効果的に他者に伝える経験を積んでいなければ、円滑に進まないことが想定される。

 つまり、二つの方向性は密接に関わり合っているということになります。これを両輪で推進していくことで、「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」を育成できるとしています。

『好き』や『得意』に関する教育課程の充実

 では、「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばす」ために、どのような教育を充実させていこうとしているのでしょうか。以下の4つを進めていくとしています。

①興味・関心が広がる教材・学習方法の選択の促進

 これについては、「多様な子供たち一人一人が主体性を発揮し、学べるようにする工夫が必要」とし、「学習の自己調整やその際に必要となる学習方略の指導等を重視すること」や「単元ベースでの授業設計により自分のペースで学べる割合を増やすこと」などを改善するとしています。

 自己調整学習については、現行学習指導要領下においても実践の蓄積がなされてきていると思いますが、個人的に中学校では難しいような気がしています。自己調整学習のサイクルについては以下の資料を参考にされてください。

(出典:文部科学省HP)

 学習方略の例については、以下の資料を参考にされてください。

(出典:文部科学省HP)

②自分の意見や考えを根拠をもって表現する活動の充実

 これについては、「書く・話すなどの活動を通じ、知識の理解や思考を表現する「外化」によって、自分なりの意味理解を構築することを重視」するとし、国語科では「自分の考えや主張を、理由や根拠をもって筋道立てて示す活動を充実」させ、外国語科では「新たに整理したコミュニケーション活動の中で、自分の意見を形成・発信する活動や身近な地域のことを発信する活動等を充実」させることとしています。

 また、特別活動では「教師の適切な指導の下で校則を含む学校生活の課題を議論し、納得解や暫定解を生み出すことを重視」させるとしています。

③生活や社会との関わりの重視

 これについては、「各教科等の学びで、実生活や実社会との繋がりを意識できるようにしていくことも重要」とし、「統合的な理解・総合的な発揮」による構造化・精選による余白の創出は、こうした視点からの授業改善に大きく資する」としています。「統合的な理解・総合的な発揮」については、以下の記事を参考にされてください。

 また、「中・高における「数学ガイダンス」「科学ガイダンス」の新設は、各種調査結果から社会・職業とのつながりが特に課題とされる数学や理科において、学習の意義を実感しやすくし、「好き」や「得意」に繋げるものである」としています。

 こうした新たな取組は期待が大きい一方で、目的も大きいため、学校現場では苦労しそうな気がします💦

④各教科等と総合的な探究の時間の連携

 これについては、「各教科等での取組で育まれた「好き」や「得意」の芽を、総合的な探究の時間において一層伸ばせる設計とする必要がある」とし、「自己の興味・関心を追究する課題設定の質を重視することとした上で、教師を起点として共通テーマを設定する「テーマ探究」と併せて、個人を起点として課題を設定する「マイ探究」をバランスよく組み合わせるとともに、「研究系」「行動系」のほか「創作系」を明示し、教員集団がチームで「マイ探究」の指導に当たるなどの指導体制の工夫を提起した」とあります。

 これも理念は素晴らしいのですが、教員集団が「マイ探究」の指導に当たれるのかどうかは疑問です💦

「当事者意識」に関する教育課程の充実

 次に、「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができるようにする」ためには、どのような教育を充実させていこうとしているのでしょうか。以下の4つの活動の中で育成を進めていくとしています。

①各教科及び総合的な探究の時間

 これについては、「各教科等を通じて、自分の意見を根拠をもって表現する活動に慣れ親しむこと」が重要とした上で、そのことが「対話と合意を図る活動を円滑に行う上で大きな役割を果たす」としています。具体的には、国語科においては「多様な他者の主張や感情を受け止め、自分の意見を豊かに形成し、相手にどう受け取られるかを意識しながら表現することを重視する」とし、特に、総合的な探究の時間は、「自己の興味・関心に関わる課題等をまとまった時間をとって探究する中で、多様な他者と議論したり、協働して課題を解決したりする学習過程を含むものでもあり、「好きを育み、得意を伸ばす」と「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」とを両輪で推進する上で重要な位置付けを担う」としています。

②特別活動

 これについては、「児童会・生徒会活動では、学校のきまりなどの生活上の課題の解決に向けて児童生徒が提案や意見表明を行い、教師等との話合いを通して学校運営に関わること」や「学校行事では、企画や運営を含めて児童生徒が主体的に役割を担うこと等を位置付ける」としています。

 また、「価値の対立や葛藤と向き合いながら納得解や暫定解を創り上げていく活動を通じて、安易な多数決を回避し、少数意見の吟味を重視する」としています。

③特別の教科 道徳

 これについては、「価値の実現をめぐる葛藤や価値の対立をめぐる葛藤に対し、自分なりの答えを見いだす問題解決的な学びや、他者の考え方や議論に触れ、自己を見つめ、多面的・多角的に考える活動を重視」するとし、教科化以降に進めてきた『考え、議論する道徳』をすべての学校において実装するとしています。

④情報活用能力等

 これについては、「日常に溢れる大量の情報の真偽や偏りを吟味して、自分なりの意見を形成したり、ときに判断を留保することは、高度にデジタル化した社会において、健全な民主主義を担う主権者を育成する観点から極めて重要」としたうえで、次期学習指導要領において拡充される情報教育において「クリティカル・シンキング(情報の吟味)を働かせ、メディアリテラシーや情報モラルの育成を図る方向で抜本的改善を図る」としています。

 以上、これまで述べてきたものを、図で示したものが以下のものです。

(出典:文部科学省HP)

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 次期学習指導要領における「自らの人生を舵取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成のために、「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばすこと」と「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができること」の二つの方向性を両輪で推進していくとしています。

 より詳しく見てみたい方は、以下のページをご覧ください。

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